【論説】「三言語話者」と「三言語併用社会」-ルクセンブルクにおける社会の単言語化と語学教育の課題-

抄録

ルクセンブルクは、ルクセンブルク語、ドイツ語、フランス語を併用する三言語併用社会(トリグロシア)である。人々は、語学学習に特化した教育制度の中でこれらの言語を学び三言語話者(トリリンガル)となる。本来、三言語には場面ごとの使い分けがあるが、外国人に対しては、場面に関係なく外国人の得意とする言語が用いられる傾向にある。こういった環境が国外からの就労、定住を促進し、今日では人口の約半数を外国人が占めるまでになった。外国人が増加すれば言語も多様化すると考えられるが、実際にはフランス語の需要が増え、外国人の多くは単言語話者(モノリンガル)であることが指摘されている。なかでも、教育現場ではルクセンブルク語を母語としない児童が半数を超え、児童の学習環境の改善と三言語話者の養成という目的の間で、人々は難しい選択を迫られている。外国人比率は年々高まっており、今後この傾向はより強まると予測される。国際化によって社会が単言語化するという矛盾の中で、人々は外国人を受け入れつつ三言語併用を維持するための方法を模索している。

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