貝原益軒『大和本草』にみる「薬種」理論・製法・服用法(五)

書誌事項

タイトル別名
  • カイ ゲン エキケン 『 ヤマト ホンゾウ 』 ニ ミル 「 ヤクシュ 」 リロン ・ セイホウ ・ フクヨウホウ(5)
  • カイバラ エキケン 『ヤマト ホンゾウ』 ニ ミル 「ヤクシュ」 リロン・セイホウ・フクヨウ ホウ (ゴ)
  • The Theory, Dispensation, and Method of Taking Medicines in Yamato Honzo (5)

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抄録

本稿の最終目的は、鎖国下における長崎貿易(とりわけ輸入品)の内容が、果たして当時における国民生活にとって不可欠なものであったのか否かを問うことにある。かりに輸入品の多くが国民生活にとって不可欠なものであったとすれば、鎖国=農業・自給型「重商主義」とする抽論(近世日本の「重商主義」思想研究-貿易思想と農政-)御茶の水書房、二〇〇三年)の論拠が揺らぐものとなる。 輸入品の主なものは、砂糖、織物、漢方などであるが、夥しい輸入量の砂糖については多くが高級和菓子(茶菓子)に使われ、織物には絹織物のほか高級毛織物も含まれている。また、漢方については定期的に高級素材が輸入されている。そこで本稿では、江戸時代中ごろにおける医薬書に、どのように漢方が紹介されていたのかを考察する目的で、貝原益軒の『大和本草』を取り上げてみた。同書には漢方の一般理論、生薬の見極め(採取)、製法、飲み方(処方)、薬類などが網羅されている。 ただし、益軒『大和本草』には、前稿に取り上げた宮崎安貞『農業全書』のような農民的(農業的)視点に立つ栽培方法は説かれていない。そのため、どの程度の薬種が自給されていたかを知ることは期待できない。今後は本稿と併せて、前稿のように当時の栽培率(自給率)を調べる必要がある。すなわち、医療レベルと栽培レベルとを並行して考究することによって、漢方(とりわけ生薬)の自給率を類推しうるのではないかという予測である。その作業の後に、再度、長崎貿易における輸入漢方の種類と流通(購買層)を確認することによって、輸入漢方の国民的必要度をはかることができるものと考えている。

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