神津島の流紋岩質溶岩の古地磁気学的研究

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タイトル別名
  • コウズシマ ノ リュウモンガンシツ ヨウガン ノ コ ジジキガクテキ ケンキュウ
  • Paleomagnetic study of rhyolitic lavas in Kozu-shima Island, Japan

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説明

神津島(北緯34.3°、東経139.2°)は伊豆小笠原弧に属する流紋岩質の火山島であり、更新世から完新世にわたる流紋岩質火山活動による溶岩・火砕岩からなっている。本研究に用いた試料は、第1期(流紋岩質火山活動初期)の、面房溶岩類の噴出にともなう、岩相の異なる火山噴出物である。また、比較対照として、第II期流紋岩質火山活動の松山鼻溶岩円頂丘活動による流紋岩質ハイアロクラスタイトの試料についても、実験をおこなった。面房溶岩類は、神津島東南端の千両池付近の海岸で採取した。面房溶岩は白色および黒色のガラス脈をともなう流理構造の発達した塊状流紋岩である。試料を採取した千両池付近では、面房溶岩は、海水との接触により、水とマグマの相互作用による様々な産状を呈する。今回主要に採取したのは、面房溶岩が高温の状態でシルト質の堆積物と混在しているペペライトの赤色シルト部分である。なお、10試料のうち2試料はシルトと溶岩が混在する接触部である。溶岩体から離れるとペペライトは同様の赤色のシルトは含むハイアロクラスタイトヘと漸移する。このハイアロクラスタイト中の赤色シルトからも2試料のシルトを採取した。さらにハイアロクラスタイト状のガラス質溶岩部分と、溶岩波の波紋岩を、それぞれ1試料づつ採取した。さらに長崎地域海岸にて、松山鼻溶岩のハイアロクラスタイトに含まれている流紋岩質本質岩片2試料を採取した。試料すべてについて、段階熱消磁と段階部分熱残留磁化(PTRM)付加を繰り返した。両者とも、100-200℃間は50℃おき、200-400℃間は40℃おき、400-520℃間は30℃おき、520-560℃間は50℃おき、さらに560-580℃間は10℃おきでおこなった。PTRMの直流磁場は50μTである。面房溶岩類ペペライトの赤色のシルト試料は、10試料とも熱消磁による磁化強度変化およびPTRM付加カーブの結果が似ており、同じシルト岩を起源としており、また、安定した熱残留磁化を持っている。というのも、同試料の熱磁化強度変化曲線は1相であり、推定されるキュリー点は580℃近くであり、このことから磁性鉱物はTiの少ない磁鉄鉱1種類なのではないかと思われる。熱消磁における自然残留磁化(NRM)の磁化方位は、接触部の試料をのぞき580℃まで大きく変化しない。よって、これらのシルトは580℃以上の温度にいったん上昇してからそのまま冷却していると考えられる。つまり、ペペライトは580度より高温で堆積した可能性が高い。同じ面房溶岩の本体から得た試料は、580℃以下で大きく方向を変えて動いた形跡はない。また、面房溶岩のハイアロクラスタイト中の流紋岩溶岩片試料では、490-520℃とペペライトより低温の滅消磁段階で、NRM方位が変化している。水との反応で、急冷相が発達しているところから、この温度が水中に流れ込んだハイアロクラスタイトの堆積時の温度と推定できる。さらに、比較試料である長崎地域の松山鼻火山の黒曜石質ハイアロクラスタイト中の流紋岩片は、冷却する間に何回か動いていると思われる。神津島の流紋岩質溶岩はマグマの粘性が大きいため、これらの試料の熱消磁の結果は、冷却時の動きが緩慢であることを示している。

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