(資料)「ウプサラ大学学生・ルンド大学教授ヴィクセルの公的文書」

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  • Official Records on Wicksell as Upsala student & Lund professor

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抄録

多くの原資料に基づいたT.ゴードルンドの名著『ヴィクセル伝』(英訳本)を底本にして筆者は「ヴィクセル年譜」を出したその付録にはイースタード刑務所の資料やヴィクセル家被埋葬者の情報等々を添えた本稿はウプサラ大学学生・OB時代(1869-1889年)・ルンド大学教授時代(1900-1916年)のヴィクセルを両大学の学生履修便覧(Katalog)に載っているヴィクセルの記事を中軸にしつつ公的文書に残るヴィクセル像を甦らせようとするものであるここでいう公的文書とは(A)1869-1902年間の『ウプサラ大学履修便覧』(B)1900-1926年間の『ルンド大学履修便覧』(C)ルンド大学での講義記録(ヴィクセルの手稿)(D)1923-1949年の『ルンド大学講義・演習便覧』の四資料である(ただし(A)・(B)は本稿で公刊し(C)は次稿で(D)は次々稿以降で公刊の予定)ルンド滞在中筆者は(A)・(B)・(D)の人名索引よりヴィクセル名の出るページを探り出しそこに出ている記事を年代順に拾ったヴィクセルの属する学生協会法学部での経済学担当者(ハマーショルドダヴィドソンラベニウス)の講義要項先輩・同輩・後輩の活躍状況ヴィクセルのルンド大学での講義要項を拾い出したこのような結果本稿は前記『ヴィクセル伝』とは別の生身のヴィクセルが自己の生涯(ただし18~66歳の期間だが)を無言の内に語りかけてくる次々稿(D)ではヴィクセルの後継者(ブロックソンマリンリンダールオーカーマンヴェリンダーら)の講義要項を拾い出すであろう。  本稿について少し敷衍しておく経緯(ケイイ)には(1)「経度・緯度」・「縦糸・横糸」と(2)「いきさつ」=「事の成り行きやそれに伴う色々の事情」と二つの意味がある(1)には空間が(2)には時間即変化が含意されているつまり「経緯」は空・時間を表す言葉である本稿はこのような「経緯」概念を念頭にしてヴィクセルの研究・教育を学生便覧・履修要項に類するものにより垣間見ようとするものであるヴィクセルは新マルサス主義運動に参加しかつ最適人口論を究極の目的としつつ理論経済学を樹立し経済学を大幅に前進させた人物であるがそれを教育の場で多くの時間を割いたにもかかわらず(否割いたが故にというべきか)偉業を達成したのであった.本稿はこれらを(A)・(B)に基づいて実証しようとしたそれはまさしくヴィクセル人生の「経緯」を物語るであろう。

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