多国籍企業の活動と環境損害 : 親会社本国と外国子会社との関係

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タイトル別名
  • Activities of Multinational Corporation and Environmental Injuries Caused : The Relation between Home State of Parent Company and Its Subsidiary Abroad.
  • タコクセキ キギョウ ノ カツドウ ト カンキョウ ソンガイ オヤガイシャ ホンゴク ト ガイコク コガイシャ トノ カンケイ

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説明

The purpose of this paper is to clarify whether the home state of the multinational corporation should take liability for environmental injuries caused. by activities of its subsidiary abroad. First, it is examined whether the host state of the subsidiary can claim compensation from its parent company by lifting the corporate veil. Second, it is inquired which theory, such as territoriality principle, nationality principle, and effect theory to follow the relation between the home state and the subsidiary abroad, is fitted for the relation of home state and a subsidiary abroad in the context of International Environmental Law. Third, it is pointed out how the activities of the multinational corporation should be regulated from the viewpoint of the protection of international environment. And finally I insist that home state should construct at least the legal system to impose compensation on parent company for damage which its effectively controlled subsidiary caused within the host state. \n 多国籍企業の活動については、その巨大な資本の故に、種々の問題を提起してきた。従来それは、経済法の分野において、本国の国家法をいかにその活動に当てはめていくかが問題になっていた。しかし、近年、その多国籍企業が国際環境法の分野でも問題になってきた。それは、本国では危険な活動のため操業基準を厳しく設定されている企業が、とりわけ発展途上国に進出して企業活動をすることによって、概して環境基準が低い途上国に環境損害を引き起こす場合が出てきたことによる。さらに、そこでの操業によって引き起こされた環境破壊が、地球規模の環境汚染に発展するおそれもある。  もちろん、多国籍企業は民間企業であるため、国家の管理が及ぶ範囲は限られている。多国籍企業は子会社を世界中に展開しており、その一つ一つの子会社は現地国家の法人になっており、その意味では、多国籍企業の外国子会社はその子会社が事業を展開している受け入れ国の企業である。  国際法の伝統的な考え方である領域主権から見ると、親会社の本国が規制できるのは本国にある親会社とその活動であり、受け入れ国にある子会社は受け入れ国の領域主権に服することになる。受け入れ国の子会社が環境損害を引き起こした場合、受け入れ国側で処理しなければならず、親会社の本国には何ら責任がないことになる。  しかし、多国籍企業が世界的な規模で展開している今日、親会社本国は外国子会社に対して何らの規制もできないのであろうか。また、受け入れ国は親会社本国に何らの請求もできないのであろうか。親会社本国と外国子会社との間に非領域的・機能的リンクによる紐帯を設定し、親会社本国の実効的管理を外国子会社に及ぼす考えも出てきていることから、ここで親会社と外国子会社の関係、親会社本国と外国子会社あるいは、親会社本国と受け入れ国との関係、さらに、国際環境法の枠組みにおける親会社本国の責任を再考してみたい。

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