芥川也寸志の映画音楽語法の変遷 --テーマ音楽の強調とモティーフの流用に着目して--

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  • 藤原, 征生
    京都大学大学院人間・環境学研究科共生人間学専攻

書誌事項

タイトル別名
  • The Transition of Musical Expression in Yasushi Akutagawa's Film Music --Paying Attention to Emphasis on Theme Music and Conversion of Motifs--
  • アクタガワ ヤ スンシ ノ エイガ オンガク ゴホウ ノ ヘンセン : テーマ オンガク ノ キョウチョウ ト モティーフ ノ リュウヨウ ニ チャクモク シテ

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抄録

本稿は, 戦後日本の作曲界を牽引した芥川也寸志(1925-1989)の映画音楽語法の変遷の解明に向けた基盤構築を目指すものである. 芥川の映画音楽の経歴は, 1951年から1970年までのI期と1974年から1982年までのII期とに分けて考えることができる. 1978年になされたインタヴューにおいて, 芥川は自身の映画音楽の理想が「画面とちまちまっとうまく同居する」音楽から, 観客に強い印象を与える「テーマ音楽」へ移行したことを告白している. 本稿では『猫と庄造と二人のをんな』(1956年), 『花のれん』(1959年), 『地獄変』(1969年)の三作品の分析を通じて, 芥川がII期の映画音楽語法の理想として掲げた「テーマ音楽の強調」が, I期の作品群の中でどのように醸成されていったのかを検証する. この関連において筆者が特に注目するのは, 先行研究で芥川音楽の特徴として指摘されている「モティーフの流用」である. 映画音楽において顕著に見られるモティーフの流用は, テーマ音楽の強調を導き, 芥川の映画音楽美学の成熟への道を切り拓いた重要な試みであった. 本稿によって明らかになる芥川の映画音楽語法の変遷は, 共同芸術としての映画を読み解くキーワードの一つとして「音楽」に注目することで, 多様で立体的な視点を持つ映画史構築に貢献するものである.

収録刊行物

  • 人間・環境学

    人間・環境学 26 91-106, 2017-12-20

    京都大学大学院人間・環境学研究科

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