『第三王国で感じられない微妙な変化』第四部抄訳

書誌事項

タイトル別名
  • 『 ダイサン オウコク デ カンジラレナイ ビミョウ ナ ヘンカ 』 ダイヨンブ ショウヤク
  • Translation and a Study of Scene 4 in Imperceptible Mutabilities in the Third Kingdom by Suzan-Lori Parks

この論文をさがす

抄録

1989年にオービー賞(Obie Award)オフ・ブロードウェイ・ベストプレイを受賞したスーザン・ロリ=パークス作『第三王国における微妙な変化』の最終章,第四部の抄訳である。本作品は,約数百万人と言われるアフリカ人の犠牲者を出しながら続けられた奴隷貿易や奴隷制の過去が,現代のアフリカ系アメリカ人のアイデンティティ形成に影響を及ぼす様相を,多彩な象徴を用いて描いた作品である。パークスの作品は斬新で伝統にとらわれない演劇的手法として知られるが,彼女のメタファー,言語反復,婉曲,言葉遊び,黒人口語表現を駆使した技法は,二ヵ月以上にわたる奴隷船の過酷な環境の中で,海に身を投じてサメの餌食になるか,あるいはアメリカで奴隷として生きるかの選択に葛藤するアフリカ系アメリカ人の先祖たちの過去を現代人の記憶のなかに再現している。パークスは記憶するという意味のre-memberにハイフンを付し,再びメンバーに取り入れるという意味を持たせる。本作品はアフリカ系アメリカ人の,記録されずに忘れ去られ,ばらばらになった(dis-membered)過去の歴史を想像の場である現代アメリカの舞台において再現するという儀式的パフォーマンスを通して,アフリカ系アメリカ人の現代の姿を捉えようとしたものである。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ