覚醒剤逆耐性の機序

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  • カクセイザイ ギャクタイセイ ノ キジョ

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本論文の背景 薬物は連用するとその効果が減弱し,同じ効果を得るためには多くの量を使用しなければならなくなる,これを薬理学で耐性が形成されたという。ところが覚醒剤(アンフェタミン類)は,連用するとその幻覚誘発作用が増強し,少量の再使用で統合失調様の幻覚が起こるようになる,これを逆耐性と呼んでいる。一度,逆耐性状態に生体が陥ると年余に渡り逆耐性状態は維持され,薬物を断って数年が経過しても少量の覚醒剤の再使用により幻覚が再現される。さらに,覚醒剤の再使用ではなく,ストレス状態に晒されると再使用と同様の幻覚が生じる。覚醒剤は依存薬物として極めて危険なものであり,特に我が国では違法薬物の中で使用頻度の高いものであり,社会的にも重要な薬物である。それと同時に,上述の現象は脳科学研究の観点から興味深く,記憶の機序や神経可塑性などの中枢神経機能の探求,統合失調症の病態解明の点からも興味を持たれている。 1995年から1997年にかけて覚せい剤逆耐性の神経科学的機序の研究を米国において行った。その時に3つ論文をまとめ,帰国後それらを補完する論文を1つ作成した。基本的には研究室の主任教授の考えに沿った結論となっている。それから20年が経っているが,いまだに,これらの論文は引用され続けている。そこで今回,20年経った時点での自分なりの考えをまとめてみた。 本論文の構成 第1部は覚醒剤逆耐性に関して著した3つの論文の和訳(意訳)を行った。第2部では3つの論文から逆耐性に関する私見を述べた。

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