ニコチン代謝に個人差が生じる要因

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  • ニコチン タイシャ ニ コジンサ ガ ショウジル ヨウイン

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抄録

タバコの主成分であるニコチンには依存性があり、喫煙者は体内のニコチン濃度を一定に保とうとして喫煙する。体内に摂取されたニコチンがそのまま尿中に排泄されるのは10%程度であり、ニコチンの体内からの消失には肝臓における代謝が大きく寄与している。主な代謝経路はCYP2A6によるコチニンとそれに続くトランス-3'-水酸化コチニンへの酸化反応である。また、ニコチンとコチニンは主にUGT2B10によりN-グルクロニドへ、トランス-3'-水酸化コチニンは主にUGT2B17によりO-グルクロニドへ代謝される。ニコチンの代謝能には大きな個人差や人種差が認められ、CYP2A6、UGT2B10やUGT2B17の遺伝子多型に起因するところが大きい。特に、酵素活性を低下または欠失させるCYP2A6遺伝子変異型を有するヒトでは、ニコチンの消失半減期が延長し、代謝プロファイルも大きく変化する。CYP2A6遺伝子変異は喫煙習癖性や発がん感受性に影響を与えることも示されている。日本人は欧米人や韓国人に比べてニコチン代謝能が低く、その要因としてCYP2A6欠損型および変異型の遺伝子頻度が高いことが大きいが、食事や環境など非遺伝的要因も関わっている。CYP2A6の発現はエストロゲン受容体、酸化ストレス応答転写因子NF-E2 related factor 2、プレグナンX受容体などの転写因子によって調節されており、その転写活性化機構もニコチン代謝能の個人差や性差の原因となっている。禁煙補助剤としてニコチンガムやニコチンパッチを使用する際、ニコチン代謝能が低いヒトではニコチンの血中濃度が高くなり、有害作用が現れる可能性があり、注意が必要である。(著者抄録)

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