抗うつ作用評価時の強制水泳試験における水温の無動時間および脳内BDNF量におよぼす影響

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  • アラガウツ サヨウ ヒョウカジ ノ キョウセイ スイエイ シケン ニ オケル スイオン ノ ムドウ ジカン オヨビ ノウナイ BDNFリョウ ニ オヨボス エイキョウ

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説明

抗うつ薬の抗うつ様効果を評価する場合、一般に24℃~25℃の水温で動物に強制水泳を負荷する。動物には容器の底に足がつかずしかもおぼれない条件下で水泳をさせ、動物がもがいたり、泳いだりして逃避する行動をあきらめた状態(無動)の時間を測定し、これが短縮されると「抗うつ様効果」が認められたと評価している。しかし、水温によって抗うつ薬の効果の出現の仕方が変わる可能性が考えられるので、今回は水温15℃で強制水泳を行い、25℃の場合と比較した。更にこの水温が脳内のBDNF(Brain-Derived Neurotrophic Factor)量にどの様に影響するかも検討した。強制水泳における無動時間は15℃の場合25℃と比べて有意に短縮したが、クライミング時間は差が無かった。また、BDNF量は前頭葉、海馬とも25℃に比べて有意に低下していたが、血漿中BDNF量は差が無かった。強制水泳の温度が低温であることから、ストレスを受けている強さの指標として、血漿中および海馬中のCRH(コルチコトロピン放出ホルモン)濃度を測定したところ、血漿中CRHが15℃で強制水泳を行った群の方が25℃の場合に比べ有意に高い値を示した。この事から15℃で行った強制水泳の方が25℃の場合に比べ強いストレスを受けていることが示唆された。この15℃における強制水泳下では、30mg/kg、60mg/kgフルボキサミン(FLV)は無動時間に有意な影響を与えなかったが、30mg/kgデシプラミン(DMI)では有意に無動時間を短縮し、クライミング時間を延長させ、いわゆる抗うつ様効果を示した。BDNF量に対しては25℃での強制水泳の場合60mg/kgFLVが前頭葉、海馬とも有意に低下していたのに対し、15℃での強制水泳では有意に増加した。以上、水温が低い状態で強制水泳を行うと動物は強いストレスを受け、CRHの血中への放出を増やすと共に、脳内BDNFを低下することが分った。また、抗うつ薬の急性投与による影響はFLVの急性投与ではどちらの水温での強制水泳でも抗うつ様効果は認められないが、DMIでは水温により異なる可能性が見出された。(著者抄録)

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