理工学部教職課程における理科教育のESDに対する有効性

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タイトル別名
  • リコウ ガクブ キョウショク カテイ ニオケル リカ キョウイク ノ ESD ニ タイスル ユウコウセイ
  • Studies on the Effectiveness of Science Education for ESD in the Teacher Training Course of the Faculty of Science and Technology

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抄録

ESDは世界が共同して取り組むべき最重要課題の一つである。日本政府は欧米諸国に比して対応が遅れ気味であったが、2002年12月の国連総会において2005年~14年までを「国連持続可能な開発のための教育の10年」と提起し、決議されてから改めて国内の関連法や制度等を整理し、2005年12月に同施策にかかわる関係省庁連絡会議を内閣に設置した。それなりの意気込みは見せたわけである。しかるに、その後の経済政策や教育政策からは世界の環境運動、政策推進に逆行するような状況も散見される。とりわけ、いわば民間セクター、市民運動に依存しがちな環境教育、ESDなどと学校教育の乖離は甚だしい。一部教員に熱心な指導者がいないわけではなく、ユネスコスクールに見るような開発教育の広がりもないわけではない。表面的には持続可能な社会や生物多様性などが学習指導要領や教科書に記載されているが、それが系統的、科学的、総合的な学習構造になっているとは言いがたい。多くの大学で環境研究もなされるようになっているが、少なくともESDをカリキュラムに位置づけ、フィールド実習その他の体験活動を含む継続的教育も十分とは言えないようである。そこで、これまでなされて来た環境教育やESDについて理科教育を中心に検討し、今後ESDをどう実践していけば良いのかについて研究に取り組むこととした。そのため、第1に学習指導要領や教科書記述やこれまでなされてきた環境教育とその発展につながると期待される中等教育のESDの実践を検討する。第2に大学における環境教育実践を金沢大学で、ESDの実践を宮城教育大学などの高等教育研究機関が学校や地域と連携しながら進めてきたそれを検討する。第3に本学の理科教育法で行っている実践の意義を述べる。この際、理科教育法という教員養成のための授業において、市民運動によって豊かな三浦半島の自然、生態系などをようやく維持、保全しえた小松ヶ池に隣接する湿地帯で復元の努力が続けられている湿田をESDにつながるフィールドと設定した。自然農法による水田の持つ機能・役割としての生物多様性や生態系サービスなどを主な切り口とし、現代の政治経済システムなどに翻弄される近代農業のあり方、慣行農法などの問題点も明らかにした上で、学生達がそれらをどのように学んだかについても分析し、大学での教職課程(ないしは教員養成)の自然科学または社会科学や哲学・思想との連携による総合的な視点での理科教育におけるESD実践の意義と方向性について考察した。

収録刊行物

  • 科学/人間

    科学/人間 48 087-126, 2019-03

    関東学院大学理工学部建築・環境学部教養学会

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