桑園雑草の生態に関する研究 (3) : 多年生桑園雑草における地下部器官の生長と分布について

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  • ソウエン ザッソウ ノ セイタイ ニカンスルケンキュウ 3 タネンセイ ソウエ

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抄録

桑園に発生する多年生雑草のヨモギ・ススキ・チガヤ・ヨナメ・ドクダミおよびヤブガラシの6種を供試し,地化部繁殖器官の生理・生態的特性を明らかにし,雑草防除対策に資する目的で1969年より蚕糸試験場日野桑園(東京都日野市)において調査を行った.主な結果は次のとおりである.1)地下茎の垂直分布は,キク科雑草に属するヨメナとヨモギが10cmまでの浅い層に分布し,チガヤ・ススキ・ドクダミおよびヤブガラシは20cm以下に分布し,桑の根と混生し競合する草種であった.2)地下茎の水平分布ではドクダミとヨメナが親地下茎より0.5mのせまい範囲に生育する草種であり,ヤブガラシは4.6mにも伸長した.また,地下茎の総茎長はドクダミが6.8mで最も短く,ヤブガラシは48mにも達し,その総重量については,ドクダミは親地下茎の5.8倍であったが,チガヤは600倍にも増加した.3)地下茎の出芽可能深度の調査から,浅い層に分布する草種は30cmの深層では出芽能力が低下するものと思われた.4)地上部茎葉の生育量から新地下茎の発生を調べた結果,ススキは8.5枚ヨメナは3.5枚ヒルガオは7.5枚チガヤは5.8枚ヤブガラシは3.5枚で新地下茎の発生をみた.5)桑と多年生雑草の光条件をめぐる競争については,つる雑草のヤブガラシと草丈の高くなるススキは桑の強害草であり,ドクダミとヨメナは弱い草種と思われた.また,地化部においては浅い層に根群をもつヨメナとヨモギは,地表に施与された肥料養分争奪に関与し,深層に根群をもつススキ・チガヤ・ヤブガラシなどは桑の根と混生するので,土壌水分争奪に関与するものと推察される.6)地下部器官の防除については,浅い層に分布するヨメナ・ヒルガオおよびヨモギは,耕起した地下茎を地表面に放置することで死滅するが,深層に分布するチガヤ・ススキ・ヤブガラシなどは桑の根と混生するので耕起することが困難であり,その防除については根群の生理・生態的特性を究明しなければならない.

収録刊行物

  • 蠶絲試驗場彙報

    蠶絲試驗場彙報 (111), 1-15, 1980-12

    つくば : 農林水産省蚕糸試験場

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