風化花崗岩山地源流域の地下水,土壌水分変動の実態

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  • Observation of the behavior of soil water on a hillslope consisting of weathered granite
  • フウカ カコウガン サンチ ゲンリュウイキ ノ チカスイ ドジョウ スイブン

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抄録

山地流域の流出機構を解明し, 森林を含む山地の環境が水循環過程に及ぼす役割を明らかにすることを目的として, 滋賀県田上山地の川向II沢流域において山腹斜面の流出量, 地下水位, 土壌水分量の観測を行った。得られた知見を要約すると以下のとおりである。(1) 1979年より1985年までの7年間の川向II沢流域の平均年降水量は1617. 2mm, 平均年流出量は821. 9mm, 平均年損失量は795. 3mmであった。(2) 直接流出率は降雨の増加にともなって増加する傾向がある。また初期流量によっても直接流出率は変化し, 降雨直前の流域の水分状態の影響が認められた。(3) ハイドログラフと地下水位の経時変化, また地下水位発生域等を検討した結果, 降雨の継続にしたがって地下水位の発生域は下流から上流へと伸びて行く傾向にあり, 発生域の広がりと直接流出量の間には対応関係が存在する。しかしピーク流量の発生後に地下水位のピークが生じること, 必ずしも地下水位の発生しやすい場所が流域の谷底部とは限らないこと, 地下水位の発生域と直接流出量が対応しない場合もあることなどの点を考慮するならば, 地下水位発生域を直ちに直接流出の寄与域と結びつけることは困難であると考えられる。(4) 斜面における土壌水分環境は上部と下部とでは大きく異なる。斜面下部では, 蒸発散と下流への移動により水分が失われるものの, より上流側の部分から水分が供給されるため, 無降雨時でも水分の減少が比較的ゆるやかである。一方, 斜面上部では下流への水分移動と蒸発散により水分は失われて行くだけであるため, 無降雨が続くと土壌の乾燥が激しい。(5) 流域からの流量は, 流域下端の水分状態に強く影響されている。以上の検討から, 飽和, 不飽和のいずれの状態においても, 土壌水の移動に対して地形の3次元形状が強く影響を及ぼしていることが明らかになった。

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