澱粉粒の酸処理で生成する分解物とその分子構造の検討

書誌事項

タイトル別名
  • デンプンリュウ ノ サン ショリ デ セイセイ スル ブンカイブツ ト ソノ ブンシ コウゾウ ノ ケントウ

この論文をさがす

説明

有機溶媒中で酸処理すると、澱粉粒が分解するが、此の分解程度は酸濃度で規定されるとの報告を参考に、トウモロコシ澱粉(ノーマル、ワキシー)、小麦、馬鈴薯澱粉を用いて、酸分解条件を種々変えて実験を行い、結果を解析した。ノーマル、ワキシー澱粉共ブタノール中塩酸濃度4Nで50℃72時間処理までは粒形を保持していたが、12N処理になると粒は崩壊した。しかしながらX線回折から結晶性は保持または増強していたため、本酸処理は最大濃度でも非結晶性部分のみ選択的に分解し、完全に非結晶区分が分解すると澱粉粒の崩壊が起きると考えられた。更に酵素感受性は、ワキシー澱粉は2N処理から約100%分解し、ノーマルは4N処理から100%近くまで分解した。この違いはアミロースの存在が大きく関与しており、酸処理は特異的に非結晶性区分に作用することから、アミロースは非結晶性部分に存在することが示唆された。次にGPCを用いて分子構造を比較した。可溶化及び枝切りした結果から、澱粉の2成分の分子量は酸濃度が上がるにつれて低分子化が進むが、8N処理以上になるとそれ以上低分子化しないことがわかった。又、可溶化試料及びこれの枝切りの試料はほぼ同様な分子量分布を示したことから高濃度の酸処理によって非結晶領域に存在する分岐領域が選択的に分解され、此の結果として短鎖アミロースが生成した。換言すれば、アミロペクチンの鎖長レベル迄分解したと考えられる。また比較的分子量の揃った分解産物が得られることから、この非結晶領域での分解もオリゴ糖レベルまで分解しないことも分かった。更に小麦と馬鈴薯澱粉を用いて同様に処理し、比較検討した結果、穀類澱粉に特徴的なアミロースー脂質複合体を形成していると考えられる領域は、この酸濃度に対しても分解に抵抗性が高いことが認められた。この結果はアミロースがアミロペクチンと結合せず、単独の形で存在することを意味し、換言すれば、アミロースの存在形態が澱粉粒中の非結晶領域にあることを示唆するものである。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ