農業関連中小企業の発展に影響を及ぼす社会文化的要因 : スリランカの食品加工業を事例に

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  • The Impact of Socio-cultural Factors on the Development of Small and Medium Enterprises: The Case of Food Processing Industries in Sri Lanka
  • Impact of Socio cultural Factors on the Development of Small and Medium Enterprises The Case of Food Processing Industries in Sri Lanka

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抄録

中小の食品加工産業は発展途上国の社会的経済的な水準を引き上げるのに重要な役割を果たしている。このことは,人工の75%が地方に居住し農業関連産業に従事しているスリランカにおいて,特に重要である。しかしながら,現在,スリランカにおいて輸入食品消費支出額が激増する一方で,GDPや加工食品輸出額は漸減傾向にある。この要因の一つに当該食品加工産業における新商品を創出する技術革新導入の遅れがある。この中小企業における技術革新導入の遅れは経済的要因と非経済的要因の影響によるものと思われる。この技術革新を継続的に行っていくには,中小企業において技術革新に適合する文化をもつことが必要であると思われる。しかしながら,従来,技術革新と社会文化的要因との相関関係に関する実証的研究は行われてこなかった。そこで,本研究ではこの相関関係に着目し,特に①スリランカの独特なカースト,階級,家族制度などの社会文化的要因が当該企業にある社会文化へ及ぼす影響,②当該企業がもつ社会文化的要因がその技術革新と企業成長に及ぼす影響の2点に関して研究を行った。本研究の調査研究対象はスリランカの西部と中央部に散在している52ヶ所の中小食品加工産業とした。この2地方を選択した理由は,スリランカの独特な社会文化的制度が伝統的に濃いと考えられるからである。これら企業の従業員582人に対しアンケート調査を行った(回収率は64%,373人から回答を得た)。また,各企業の経営管理者に対し技術革新と企業成長について対面聞取り調査と資料収集し,分析を行った。調査分析の結果,次のことが判明した。①家族,民族,カースト,階級,教育システムなどは企業における技術革新に対し一般的に寄与しないこと,②企業にある社会文化的要因が技術革新に一般的に寄与しないこと,さらに③以上の2点の影響によって,これらの中小の食品加工産業は低い新商品開発のための技術革新力と,そのことによる低い企業製造額成長率によって特徴づけられることである。以上から,スリランカの中小食品加工産業における社会文化的側面を緊急に再構築していく必要があると思われる。しかしながら,その文化は長い歴史の中で相対的に堅固に永久的なものとして創造されており,その変換には大きな抵抗があるとみられる。それでも,少なくとも中小食品加工産業における文化の変換は,長期的な経営戦略上,大変に重要であり実践的でもあると考えられる。

収録刊行物

  • 農業経済論集

    農業経済論集 55 (1), 147-165, 2004-06

    福岡 : 食農資源経済学会

被引用文献 (1)*注記

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参考文献 (30)*注記

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