豊前海カキ養殖に関する経済研究

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抄録

1)北九州地区の宅配注文は、自家消費を目的とした客層が比較的多く、行橋地区では他人への贈答を目的とした客層が多いことが推察された。2)北九州地区では自己消費で且つ1シーズン1注文の客層が比較的多いと考えられる。3)他人への贈答目的の客層が多いことが、年内に宅配注文の6割が集中することの原因になっていると考えられる。4)北九州地区で、年明け以降に自己購入者の割合が増加することについては、カキの身入りが良くなり品質の向上する年明け以降を選んで購入する人がいると考えられる。このような客層を増やすことが受注の年末集中と年明け以降の需要と供給の不均衡を解消するために重要であろう。5)また両地区とも北九州市内或いは近隣地であるが、北九州市で最も人口が多い八幡西区からの注文は、北九州市内の世帯数の割合に対して少なく、生産地に近い区からの受注の割合が高くなっている。北九州市内は生産地からも近く、知名度向上や直販の利用促進などの開拓の余地があると考えられる。6)消費者アンケートでは年明け以降もカキは普通に食されており、このことからも宅配の年末集中は贈答品としての注文であると推測される。7)直販で新規に販路を拡大できる可能性があるのは北九州市都市圏であると考えられる。8)豊前海一粒かきの購入実績のある人の味の評価は非常に高いと言えるが、価格についてはどちらかといえば安いという答えがほぼ半数で、味の評価ほどの積極的な肯定ではないと考えられる。9)商品構成等の改善により少し価格を下げたパッケージの設定と、PR等をうまく実施することによって宅配でも市場開拓の余地は残されていると考えられる。10)豊前海で漁業者が直販・宅配を実施していることの知名度が、「豊前海一粒かき」というブランド名の知名度よりも低いという現状は、最終目的がカキの販売促進であるという点から大きな問題であると考えられる。自発的に新鮮な魚介類の情報を探すと答えた回答者はテレビ、情報誌といったマスメディアを利用しており(図23)、今後の販売促進にはブランド名以上に販売について重点を置く必要があると考えられる。また、マスメディアによる情報発信は一過性であるため、これだけに頼らずインターネット等を活用し、常設的な情報発信源を設けることが重要であろう。

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