土壌微生物によるs-トリアジン系除草剤の分解とその原位置バイオレメディエーションへの応用

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  • Biodegradation of s-Triazine Herbicides by Soil Microorganisms and Their Application for In Situ Bioremediation

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抄録

環境中で中度の残留性が認められているs-riazine化合物は、除草剤として農業上広く利用されている。本総説では、塩素化及びメチルチオ化s-riazine化合物の微生物分解に関するこれまでの知見を述べると共に、単離したsimazine分解菌を利用した原位置バイオレメディエーションの実施例について紹介する。塩素化s-riazine化合物の分解微生物としてはarazine分解菌として単離されたPseudomonas sp.ADP株が著名で、最も仔細に研究されている。ADP株では、まずarazine chlorohydrolase(AzA)による脱塩素を初発反応として、その後AzBCDEFが順に関与して無機化に至る。これらの酵素遺伝子群の全部あるいは一部を有する塩素化s-riazine分解菌の単離例は多く、我々のグループが単離した新規simazine分解菌CDB21株でもazABCDEF遺伝子のすべてが見つかった。しかし、ADP株ではazAがORF30とazBの間に位置しているのに対して、CDB21株ではORF30がazBとフューズしており、塩素化s-riazine分解遺伝子群の構造に多型があることが明らかになった。メチルチオ化s-riazine化合物では、好気及び湛水のいずれの条件においてもメチルチオ基のS酸化を解して分解が進むことが古くから知られていたが、最近ようやくそのプロセスを担う微生物、Bacillus cereus JUN7株とRhodococcus sp.FJ1117Y株が単離された。JUN7株はLuria-Berani培地のような富栄養培地中で、またFJ1117Y株はメチルチオ化s-riazine化合物を唯一のS源として与えた無機培地中でメチルチオ基をS酸化し、最終的に脱メチルチオ化物(水酸化物)を生成した。両株とも塩素化s-riazine化合物を分解せず、またazAやrzN(riazine hydrolase遺伝子)を持たないことから、未知の分解機構の存在が示唆される。また、CDB21株を含むsimazine分解複合微生物系を集積させた特殊な木質炭化素材を用いて、芝草保全の為に定期的にsimazineが散布されるゴルフ場において原位置バイオレメディエーション実証実験を行ったところ、本資材は約2年間に渡ってsimazineの下方浸透防止に有効であった。この結果は、土壌環境へ外部から微生物を導入する際にはその住処となりうる適当な資材の併用が好ましいことを示している。

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