重窒素標識による家畜ふん堆肥中窒素の動態解析に関する研究

書誌事項

タイトル別名
  • ジュウ チッソ ヒョウシキ ニ ヨル カチクフンタイヒ チュウ チッソ ノ ドウタイ カイセキ ニ カンスル ケンキュウ
  • Studies on the dynamics of 15N-labeled animal mature nitrogen applied to fields

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抄録

鹿児島県は日本有数の畜産県であり、これに伴い家畜から排泄されるふん尿も非常に多い。家畜ふん尿は窒素やリンなどの作物生育に有用な養分を含んでいるが、地下水の硝酸性窒素汚染等の要因になることも指摘されている。生産および環境の両面を考慮した適切な家畜ふん尿の農業利用を推進するために、窒素の土壌中での動態を知ることが重要である。重窒素追跡法はこれまで様々な場面で用いられてきた直接法であり、作物吸収のみならず窒素動態等を求めるための有力な手法である。本研究では、重窒素標識家畜ふん堆肥の作成法について検討するとともに、水田と畑地において作物吸収、土壌残存および溶脱等の窒素動態を重窒素追跡法で明らかにすることで、環境保全的な家畜ふん堆肥の施用法の基礎的知見を得ることを目的とした。重窒素標識家畜ふん堆肥の作成法について検討し、(1)高濃度の標識ふんを得るには6日程度以上の標識飼料の給餌が必要なこと、(2)標識の均質性について評価し、本手法で作製された堆肥を動態研究に供試するのに問題はないこと、(3)鶏ふんのような易分解性の窒素が多い資材の堆肥化では窒素損失が多くなること等を明らかにした。作製した重窒素標識家畜ふん堆肥を水田に施用してその窒素動態を検討した結果、(1)家畜ふん堆肥の窒素肥効は幼穂形成期頃までで、穂肥に相当する窒素の施用が必要なこと、(2)窒素肥効率は鶏ふん堆肥40%、牛ふん堆肥20%、オガクズ牛ふん堆肥10%程度と評価されること、(3)成熟期の土壌残存率は鶏ふん堆肥47%、牛ふん堆肥66%、オガクズ牛ふん堆肥91%で、牛ふん堆肥とオガクズ牛ふん堆肥では連用での蓄積を十分に考慮する必要があること、(4)成熟期の脱窒率は鶏ふん堆肥37%、牛ふん堆肥28%、オガクズ牛ふん堆肥5%で、水田での脱窒の主体は安定無害なN2ガスであることから窒素の浄化の面からも水田での家畜ふん堆肥の積極的な利用が有効なこと等を明らかにした。作製した重窒素標識家畜ふん堆肥を露地野菜畑に施用してその窒素動態を検討した結果、(1)鶏ふん堆肥中窒素は残効が少ないこと、(2)鶏ふん堆肥中窒素の溶脱を少なくするには易分解性窒素が急速に無機化する期間に作物に効率よく吸収させることが重要なこと、(3)牛ふん堆肥は窒素の分解が緩やかなため、2作栽培後でも施肥窒素の52〜74%が土壌に残存し、土壌間で窒素の動態が異なる可能性があること、(4)牛ふん堆肥中窒素の作物吸収は緩やかに減少し、6作目でも残効が定量的に確認されること、(5)降水量が多い時期での施肥では、牛ふん堆肥の施用は溶脱を少なくするのに有効なこと、(6)重窒素標識資材を用いることで、実際施用レベルの窒素添加量でガラス繊維ろ紙法を用いた家畜ふん堆肥中窒素の分解過程の解析ができること等を明らかにした。

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