インドネシアにおける伝統的アグロフォレストリーに関する調査研究 : Banten州Baduy共同体を事例として

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  • Agroforestry by Baduy Community in Banten province, Indonesia

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抄録

アグロフォレストリーは林業と農業を組み合わせることで、自然環境を保全しながら、多様な食料を持続的に生産し、地域住民の生活の安定に寄与できる手段として、近年、熱帯地域で注目されている。本研究は、これまであまりよく知られていないBaduy共同体の伝統的なアグロフォレストリーの実態について、土地利用形態、植物の空間利用、栽培植物の分布、森林利用などの面から検討したものである。Baduy共同体の土地利用にはKebon型とHuma-Jami-Reuma型の2つがある。Kebon型には、焼畑はなく、上層でフルーツや用材林を育成し、下層で有用草本(食用、薬用、祭祀)を栽培する。ここでは持続的に有用植物が収穫できる。Huma-Jami-Reuma型は焼畑移動耕作の各時期の名称である。Humaは焼畑後、主に陸稲を植える1年間のこと。Jamiは陸稲収穫後、野菜を栽培すること。Reumaは二次林化した状態のこと。ここではフルーツや野生植物を採取する。そのサイクルは約8年である。Jamiでは下層での有用草本の値栽が多い。そこでの土壌は下層植生や前作陸稲の枯れ草で保全されていた。Reumaでは上層はモルッカネムと果樹、中層にバナナとノニ、下層は野菜と野生有用種で構成され、植生は下層から上層へと段階的に更新される仕組みになっていた。このシステムが植生の多層構造を維持している。Baduy共同体の伝統的なアグロフォレストリーは、それぞれの土地利用タイプが組み合わさって、土地の生態的循環利用を完結させており、そのことが土壌保全と持続的な農林業の多様な生産につながっていると考えられる。

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