繰り返し回分式清酒醸造における酵母菌体内S-アデノシルメチオニン

書誌事項

タイトル別名
  • Accumulation of S-Adenosyl-Methionine in Reused Yeast during sake Mash Fermentation
  • クリカエシ カイブンシキ セイシュ ジョウゾウ ニ オケル コウボ キンタイ ナイ S-アデノシルメチオニン

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説明

一段仕込みの醪及び固液共存培地の両方を用い,酵母の増殖プロセスと発酵プロセスを区別してSAM動向を検討した。酵母を過剰接種して増殖を廃すると,低温下における酵母菌体内SAM高蓄積などの含硫物の特徴的な動向の差は縮小傾向となった。これにより低温下での酵母菌体内へのSAMの高蓄積には,低温で増殖することの影響が大きいことが明らかとなった。また,酵母の過剰添加は醪の発酵にも大きく影響し,特に醪初期のボーメの低下とアルコール生成が早期化し,結果的に発酵期間は数日短縮された。また,この醪から酵母菌体を遠心分離により回収し,次醸造へ再利用する回分醸造を試みた。回分醸造でも増殖プロセスを廃して順次スケールダウンして進めると,3回目または4回目以降では発酵に支障はないものの,アミノ酸度と製成酒中のS-アデノシルメチオニン(SAM)の増加が顕著であり,酒質も明らかに異なり,味のくどさや苦味が感じられた。その一方,回収菌体を繰り返し利用しても,酵母菌体内にSAMが高蓄積され続けることはなく,1回目の醸造以降に極端な増加が認められることはなかった。さらに,固液共存培地を用いて比較したところ,糖などは徐々に供給され並行複発酵しているが,醪初期のように米粒溶解に起因する固形物の減少や流動性の向上などの変化がないためか,発酵経過とSAM蓄積は回分醪ほどの差にはならなかった。このことから,醪初期の溶解に伴う流動性の向上及びボーメ低下がもたらす影響が重要であることが明らかとなった。

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