堆積杉バークの特性と施用効果

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  • タイセキ スギ バーク ノ トクセイ ト シヨウ コウカ

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抄録

堆積杉バークのさらなる積極的な利用促進を図るため,特性や施用効果を検証し,以下の知見を得た。1 堆積杉バークは,代表的な家畜ふん堆肥(木質混合牛ふん,豚ぷん,鶏ふん堆肥)に比べ,肥料成分の含量が少ない。また,杉バークの堆積過程でpHの上昇,C/N比の低下,CECの増加が見られる。その変化は堆積後1年で認められ,2年でほぼ安定した。2 コマツナを用いた幼植物検定ならびに栽培試験の結果,発芽率および根長,生育などから堆積杉バークの植物生育阻害作用は認められなかった。3 堆積杉バークを土壌に混和すると,土壌中の粗孔隙が増えたことによって飽水時の水分合量が増加した。一方で排水性が高まり,堆積杉バークを混和しない土壌に比べて速やかに排水が進んだ。4 堆積杉バークを混和した土壌の窒素取り込み量は,水田・畑双方の土壌において稲わらに比べて小さく, 水田土壌では, 2Ot/10a施用まで窒素取り込みがほとんどみられず, 畑状態では2Ot/10a施用で培養開始最初の1週間に約2.5kg/10aの窒素が取り込まれた。5 堆積杉バークを土壌表面に施用することで,土壌水分の蒸発を緩やかにする効果,地温の変化を緩和する効果が期待できる。また,堆積杉バークを表面施用し上部に施肥を行っても肥料の溶出に支障はない。6 小ネギハウス土壌に施用された堆積杉バークの構造は,施用した後6作(2年間)程度でその大部分が破壊されるものと思われる。7 堆積杉バークを小ネギハウス土壌に施用することで,土壌CECが増加し,作を重ねていく過程での塩基飽和度の上昇が抑えられた。その効果は7作の間(約2年間)継続した。8 堆積杉バークを小ネギハウス土壌に施用することで,土壌孔隙率の減少が抑えられたが,その効果は作付けを重ねる毎に小さくなり, 6作後の時点でほとんどなくなった。この傾向は堆積杉バークに由来する有機物残さ量の減少と関連がみられた。9 堆積杉バークを施用した小ネギハウス圃場において,栽培時期が6~8月の高温期にかかる場合には土壌がより乾燥しやすくなる。したがって,葉先枯れ株の発生および減収を避けるために土壌水分を適正な状態で維持する水管理が必要である。

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