アサツキとチャイブの休眠に関する研究

書誌事項

タイトル別名
  • Dormancy of Asatsuki (Allium schoenoprasum L. var. foliosum Regel) and Chives
  • アサツキ ト チャイブ ノ キュウミン ニ カンスル ケンキュウ

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抄録

1. アサツキとチャイブは休眠生態と鱗茎形成の有無で大きく異なった。両栽培種とも仲秋後半から晩秋前半にかけて約1か月間以内の,比較的浅い自発休眠(晩秋期休眠)に入ったが,アサツキはそれに加えて晩春から仲夏にかけての約2.5か月間,深い自発休眠(夏期休眠)に入った。その間チャイブは旺盛な生育を続け,夏期休眠は見られなかった。2. アサツキは夏期休眠に先だって明白な鱗茎を形成し,鱗茎の発達完了に伴い地上部を黄変枯死させたが,チャイブは年間を通して明白な鱗茎を形成することはなかった。3. アサツキの鱗茎形成は冬の(1月中旬頃までの)自然低温遭遇によって誘導され,これはその後に夏期休眠の導入を伴った。低温に遭遇させないと,自然の長日条件下でも鱗茎を形成せず,また休眠もせずに成長を続けた。4. アサツキの晩秋期休眠誘導は13℃で最も促進され,13℃の処理期間が5週間で誘導効果が最大に達した。13℃より温度が低くなるにしたがって休眠誘導効果が小さくなり,1℃になると逆に休眠打破された。13℃より温度が高くなるにしたがっても休眠誘導効果が小さくなり,21℃では休眠誘導効果はほとんど見られなくなった。5. アサツキの晩秋期休眠における成長力が急速に低下し始める時期,休眠の深さ,休眠期間,成長力の回復時期には品種・系統間で差異が見られた。6. アサツキ鱗茎の芽の自発休眠は収穫直後(6月末)が最も深く,その後日数の経過とともに浅くなり,8月中旬には完全に覚醒した。萌芽適温域は休眠が深い時期は9~13℃であったが,覚醒時には9~21℃に広がった。根の自発休眠は芽に比べると浅く,8月初めに完全に覚醒した。発根適温域は収穫直後には9~17℃であったが,8月上旬には9~25℃になった。7. 収穫直後2週間ぐらいまでの休眠が深い時期のアサツキ鱗茎は,33℃までの高い温度で貯蔵するほど萌芽が促進された。しかし,貯蔵期間が長くなると萌芽の促進を最大にする温度が低下し,4週間貯蔵では25~33℃が,6週間貯蔵では17~33℃が,8週間貯蔵では9,17℃が最大の萌芽促進を示した。収穫直後から2週間を単位とした2段階(4週間貯蔵)ないし3段階(6週間貯蔵)の時期別変温貯蔵を行うと,一定温度貯蔵より萌芽を著しく促進した。最も萌芽を促進した時期別変温貯蔵は,2段階貯蔵の場合は前期を高温,後期を中温にする貯蔵で,3段階貯蔵の場合は前期を高温,中期を中温,後期を低温にする貯蔵であった。8. アサツキの休眠鱗茎に対するベンジルアミノプリンの50ppm水溶液浸漬処理は高温貯蔵以上の休眠打破効果を示した。

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