福岡県に移入・繁殖したハスの生態に関する研究

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抄録

ハスのOpsariichthys uncirostris uncirostrisは,コイ科ダニオ亜科ハス属に属する純淡水魚であり,その自然生息域は琵琶湖,淀川水系,及び福井県三方湖とその流入河川に限られている。しかし琵琶湖産アユ放流事業によりアユ種苗に混入したハスが国内の広い範囲に定着するようになり,本県でも約30年前に初めての生息確認後,増加傾向にある。本研究では漁業権河川での生息分布状況を聞き取りと漁獲調査で把握するとともに,得られた採取物を用いてハスの年齢,成長,成熟,食性を明らかにした。年齢と成長については年齢形質として鱗を用いた年齢査定を行い,次に雌雄別年齢別の全長からvon Bertalanffyの式により雌雄別の成長曲線を推定した。また,鱗に標された最大輪紋数によりハスの寿命を8歳とした。食性は消化管内容物を観察することにより時期別や成長段階別に求めた。その結果,3歳頃から魚類への依存度が高まり,オイカワは周年を通じて,アユは遡上時期の3~5月に多く捕食されているのが確認された。産卵期は生殖腺指数と河川での産卵行動観察の結果,5~8月と判断された。産卵場は水深5~40cm,流速0.1~0.5m/sec,底質が砂や小砂利の場所で見られ,オイカワの産卵場環境とほぼ同一であった。

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