マウス・アストロサイトでのmiR-29依存性の遺伝子発現の網羅的解析

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  • Global profiling of gene expression in mouse astrocyte in response to the potential longevity determinant miR-29

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抄録

マイクロRNA(miRNA)は多くの生物種の多岐にわたる生命現象において遺伝子発現の転写後制御機能を担っている小分子非コードRNAである。前回,著者らは加齢マウスの脳内において発現が最も顕著に上昇している小分子RNAとしてmiR-29を同定した。miR-29は脳組織では主にアストロサイトで発現するmiRNAで,脳発達の初期にはほとんど発現は認められないが,若齢期から繁殖最盛期にかけて発現の上昇が続いた後,その最大発現レベルを寿命終末期まで維持するという発現パターンを示す。miRNA本来の生物学的機能とmiR-29のこのような発現挙動を考え合わせると,miR-29がその多面発現性を通して哺乳類生物種固有の寿命プログラミングの中心的存在として働いているのではないかとの期待がもたれる。今回,この寿命決定機構解明の観点から寿命プログラム初期のマウス脳内でのmiR-29の機能的役割を明らかにする目的で,miR-29が未発現のマウス胎児由来のアストロサイト内でこのmiRNAを強制発現させ,そのゲノムワイドでの影響を転写と翻訳の両レベルで調べた。マイクロアレイから得られた転写レベルでの発現プロファイルではmiR-29発現に応答した多数の遺伝子の発現変動が観察された。また,質量分析による翻訳レベルでのプロファイリングからはmiR-29の標的についての複数の候補遺伝子が特定された。これらmiR-29応答性の発現遺伝子の機能アノテーションをインフォマティックな手法により行った結果から,脳発達段階でのmiR-29は細胞内代謝活性と正常な細胞増殖能は維持しながらも,成体としての完成状態への成熟を着実に誘導すべく多数の遺伝子の発現を統御しているという構図が想定された。このような機能的特徴は繁殖期以降の成体で従来報告されているものとは異なった側面をもち,miR-29がライフステージ依存的に下流遺伝子の発現調節様式を巧妙に制御しながら寿命プログラムの進行役を果たしている様相が示唆された。

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