サトウキビ(Saccharum officinarum L.)から分離した窒素固定内生菌の窒素固定と窒素放出機構

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  • Characteristics of nitrogen fixation and nitrogen release from diazotrophic endophytes isolated from sugarcane (Saccharum officinarum L.) stems

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抄録

サトウキビ(Saccharum officinarum L., 品種農林8号)の茎から分離された内生窒素固定菌(JA1株,JA2株,菌の性質からGluconacetobacter diazotrophicusと予測された)の15N2固定活性とアセチレン還元活性(ARA) を調べた。試験管内で固形LGIP培地または液体LGIP培地で培養した菌を,酸素濃度を0から20%まで変化させて,24時間15N2固定活性を測定し,その後同じ試験管で1時間ARAを測定した。固形培地では,O2 0.4%で最大活性を示したが,液体培地では,O2 0%で最大活性を示した。どちらも,O2 20%まで,酸素濃度が高まるにつれて活性が低下した。JA1株の生育密度(吸光度)とARAをLGIP液体培地に植継いでから10日後まで毎日測定した。菌密度は,植継1日後に急速に高まり6日後までは増加したが,それ以降10日目までは増加が抑制された。JA1株の増殖抑制はクオラムセンシング機構によると予想される。ARAも植継5日目までは上昇したが,6日目以降急激に低下した。7日目から10日目までは,ほとんど活性を示さなかった。この結果は,本菌の窒素固定活性は,菌の増殖中にのみ発現し,増殖が止まると窒素固定活性も停止することが示唆された。このことが,サトウキビ植物体内でも同様であるとすると,内生菌が増殖を続けることが,窒素固定の維持に必要であると推定される。内生菌から,植物への窒素の放出は,サトウキビの生育促進に重要である。液体培養したJA1株は,24時間の15N2固定直後では,大部分の固定窒素が菌体内に残存しており,培地中には,固定窒素総量の4%程度のみ放出していた。一方,24時間15N2を固定させた後,酸素濃度0-20%で10日間培養を続けたところ,酸素濃度が高い程,放出15N量の割合が増加し,O2 20%では,固定窒素総量の40%が培地に放出されていた。これらの結果は,JA1株は,窒素固定停止後,増殖を停止し,菌の死に伴う分解により,窒素を放出するのではと予想された。

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