東北海区に於けるサンマ資源の数量変動に関する研究(1)

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  • ヒガシホッカイク ニ オケル サンマ シゲン ノ スウリョウ ヘンドウ ニ カンスル ケンキュウ 1

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抄録

東北海区の秋季のサンマ漁況は、漁獲物組成が単一であるか双峯分布であるかによって左右される。このことはサンマの成長が速く、しかも漁獲年令範囲が極めて狭いことから、その年の北上サンマの発生・成育状態と最も直接的な関係をもっていることが推察される。従って北方移動期(北上期)と南方移動期(南下期)の両道筋に当る北海道近海の局地水域における資源構造と、秋季のそれとの関連及び両移動期にみられる生産に関する特性を把握することによって、漁獲量の増減をある程度の精度をもって予測することが可能であると考えられる。本研究は以上の観点に立って進められたものであり、その結果の大要は次の通りである。(1)北方移動期(北上期)と南方移動期(南下期)とには漁獲物組成の時期的変化がそれぞれ見られる。秋季の漁獲サンマの主群をなす中型群の体長の峯は26、27cm台であるから、この大きさの群が多く出現する時期を境界として、この時期を南下初期とすると、この時期以降が南下期、この時期以前が北上期と分けることが出来る。1951年から'61年に至る11ヶ年間について、両期の時期的な比較を行ったものが第12図である。両移動期の魚群組成の特色として、夏の北上期は主として中型群(体長23~28cm台に峯を持つ群)と小型群(体長22cm台以下に峯を持つ群)から成り立ち、その魚体の大きさは両群の混獲状況によって異なり、年による変動が大きい。今一つの特徴としては大型群(体長29~31cm台に峯を持つ群)又は特大群(体長32cm台以上に峯を持つ群)が極めて少ないことである。秋の南下期の魚群は主として中型群と大型群からなり。その大きさには殆ど年変動がみられない。この外小型群の混獲が極めて少ないことを特徴とする。(2)北上期の漁獲量は漁獲物の質(中型群と小型群との構成割合およびその大きさ)によって相違がある。漁獲物の質と漁獲量から3つのグループに区別することができる(第13図)。Iグループ...北上期の漁獲主群が小型群で、漁獲量の少ないグループ...それに該当する年...'57, '58, '59年 IIグループ...北上期の漁獲主群が中型群で、漁獲量の極めて多いグループ...それに該当する年...'56, '60, '61年 II'グループ...IIグループと組成は同様であるが漁獲量の少ないグループ...それに該当する年...'52, '53年 (3)北上期にみられる3つのグループと、秋季の大型・中型群の漁獲量との関係(第14図)では、中型群の場合にはどのグループでも、漁獲量の変動が少なく比較的安定しているのに対し、大型群のそれは、Iグループの年には多く、II・II'グループの年には少ないことが判然としている。しかしどのグループでも北上期の漁獲物の体長の峯が小さい程漁獲量が多い傾向がある。(4)近年のサンマ棒受網漁船の着業統数は2,000隻前後でほぼ一定している(第3表)。しかも漁場範囲も大局的・綜合的にみれば大差がないにもかかわらず、航海数には年によって著しい差違が見られる(第2表)。その因は解禁当所の漁場位置によるものであって、既往の実績に基づいてこれを平均化した標準航海数は、近年のサンマ漁業における初漁場位置による1特性値と考えられる。それは第4表に示した通りである。(5)北上期と南下期とにおける1航海当り漁獲量の間には有意な逆の相関関係が見られる。この関数を本州側に陸揚した場合と、本州と北海道の双方に陸揚した合計の場合とについて、それぞれ平均化すれば次式で表わされる(第16図)。 Y=4.08-1.338X Y=4.03-0.1776X' Y=北上期1航海当り漁獲量、X=本州陸場1航海当り漁獲量、X'=本州・北海道陸揚合計1航海当り漁獲量 この値は近年の魚群の質的構成における密度の多少を反映する平和的な係数として、1特性値と考えられる。(6)この2つの特性値を用いて、理論的に予想漁獲量を算出し、実際の漁獲量との一致度を比較した結果(第5表)、およそ80%程度の精度をもって実漁獲量を予測することができる様である。

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