始原生殖細胞および比内鶏判定マーカーを用いた比内鶏復元技術の確立(3) : 遠距離輸送した凍結始原生殖細胞の移植による比内鶏の機能的な配偶子の生産

抄録

本研究では,高病原性鳥インフルエンザ発生時のリスク分散を想定し,茨城県つくば市のサブバンクで保管した比内鶏の凍結始原生殖細胞(PGCs)を秋田県大仙市まで輸送した後,融解・移植による個体復元を試みた。東日本大震災の影響により凍結融解した比内鶏PGCsの大部分を失ったものの,残りを33個の白色レグホーン胚へ移植することができ,このうち19個(雄12個,雌7個)がふ化し,8羽(雄7羽,雌1羽)が生殖系列キメラニワトリであることを確認した。検定交雑の結果から,凍結PGCs由来の後代産出率が高かった雄の生殖系列キメラニワトリ2羽と,雌の生殖系列キメラニワトリ1羽を交配したが,これらの組み合わせからは比内鶏を復元できなかった。代わりに,これら雄の生殖系列キメラニワトリ2羽と,比内鶏の非凍結PGCsの移植により作出した雌の生殖系列キメラニワトリ2羽と交配した結果,14羽の比内鶏を復元することができた。性成熟に達した比内鶏11羽(雄6羽,雌5羽)のうち,ふ化日が比較的近い7羽(雄3羽,雌4羽)についてそれぞれ精液性状および産卵率を検査した結果,通常の比内鶏と同等の成績であった。以上より,本研究によって遠距離輸送したニワトリ凍結PGCsが機能的な配偶子へ分化することが初めて証明された。このことから,ニワトリ凍結PGCsの保管とその遠距離輸送は,産業有用品種や希少品種の高病原性鳥インフルエンザ発生時のリスク分散に資するものと期待される。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ