南九州の山地渓流域におけるリーフリター(アラカシ; Quercus glauca),森林土壌,基岩の溶出特性

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タイトル別名
  • Leaching characteristics of leaf litter, soil and bedrock in a stream basin of the Southern Kyusyu Mountains

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説明

渓流水質組成を規定する第一の要因は,流域を構成する基岩の岩種や地質構造等の地質的要因であるといわれてきたが,筆者は河畔域から渓流に供給されるリーフリターは膨大な量にのぼると推測されることから,その溶出成分も渓流水質の形成に重要な役割を果たすものであることを明らかにしてきた。しかしながら,落葉広葉樹リーフリターの分解に伴う重量損失と構成成分の変化については知られているが,常緑樹リーフリターの溶出特性については依然として既往実験が少ない。さらに,流域を構成する基岩・土壌の成分溶出特性についても不明な点が多い。このような観点から本研究は,古第三紀層より構成され,常緑広葉樹のアラカシ(Quercus glauca)が優占する南九州山地渓流を対象地として,常緑広葉樹のアラカシリーフリター,流域を構成する基岩,土壌の溶出特性を比較検討することを目的とした。2016年3月,一ツ瀬川支流竹尾川下流(宮崎県西都市)の河畔域の2地点に生育するアラカシリーフリター(2年葉),根茎付近の土壌サンプル,基岩サンプル(粒径2mm以下)を採取した。リーフリターは十分な洗浄・乾燥と重量測定の後3枚,土壌サンプル,基岩サンプルは1mgずつ,それぞれ1,000(ml)の現地渓流および蒸留水を満たしたビーカーに投入し常温の実験室内に置いた。各サンプルにはそれぞれ5回の繰り返し(サブサンプル)を設けた。30日後,90日後の各溶液中のTC(全炭素),TN(全窒素),SiO2,陽イオン(NH4+,Na+,K+,Mg2+,Ca2+)濃度を測定した。また,90日間での分解によるアラカシリーフリターの損失重量も測定した。アラカシリーフリター表面のクチンは成分溶出の妨げとなるが,損失重量とTC放出量を目安とすればクチンの溶出には概ね30日を要し,成分放出量は概ねリター>土壌>基岩という傾向を示した(P<0.05)。リーフリターでは実験開始直後からK+,Ca2+の放出が進むのに対し,基岩では実験開始から30日以降でのNH4+,K+,Ca2+の放出が進んだ(P<0.0001)。なお,本実験では腐植土の形成が不十分な不安定な河畔から土壌サンプルを採取したため,十分な成分放出は確認できなかった。以上の結果から,渓流に供給されるリターも渓流水質の化学的組成に寄与している可能性のあることが明らかになった。

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