部分的なシートマルチが早生系温州ミカンの果実品質および収量に及ぼす影響

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タイトル別名
  • Effects of partial sheet mulching on fruit quality and yield of early maturing satsuma mandarin (Citrus unshiu Marc.) trees
  • ブブンテキ ナ シートマルチ ガ ワセケイ ウンシュウ ミカン ノ カジツ ヒンシツ オヨビ シュウリョウ ニ オヨボス エイキョウ

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抄録

耕土が深く、乾燥ストレスが付与されにくい花崗岩を母材とする中粗粒褐色森林土で栽培された早生系温州について、白色透湿性シートによる部分マルチが高品質果生産に及ぼす影響を明らかにするため、部分マルチの被覆割合、被覆時期および等高線に対する被覆方向が、糖度、着色、収量などに及ぼす影響を検討した。1)部分マルチの被覆割合では、90%被覆および70%被覆区の‘市文早生’のLWPは、概ね-0.7MPa付近で維持されたが、100%被覆区では90%被覆および70%被覆区よりも低かった。果汁の糖度は、90%被覆および70%被覆区で無被覆区に比べ約1.5°高くなった。一方、100%被覆区の糖度は他区に比べ著しく上昇した。果実の着色は、シートの被覆割合に比例して優れ、100%被覆および90%被覆区では9分着色以上の果実の割合が顕著に増加したが、70%被覆と無被覆区の間には明らかな差は見られなかった。果汁のクエン酸含量は、90%被覆および70%被覆区では無被覆区とほぼ同じレベルまで低下したが、100%被覆区では有意に高くなった。従って、耕土の深い園地における部分マルチの適正な被覆割合は80~90%と考えられる。2)被覆時期については、5月および6月被覆区の‘日南1号’の糖度は、10月18日で12°を上回った。果実の着色は、被覆時期が早いほど優れ、a*値が高かった。3)等高線に対する被覆方向の違いについては、‘宮川早生’の糖度は、被覆直後では処理間に差は見られなかったが、収穫時には無被覆に比べて縦敷きで1.7°、横敷き区で0.9°高くなった。さじょうの糖含量も無被覆に比べ縦敷き区で有意に多かった。a*値は、両被覆区で有意に高くなり、果実の着色程度別割合についても両被覆区で9分着色以上の割合が明らかに多かった。階級割合、収量および平均果実重については、処理間に明らかな差は見られなかった。収穫後の樹体のデンプン含量および翌年の着花、新梢発生についても有意差はなかったが、無被覆区に比べ両処理区でデンプン含量が多く、総花数が多い傾向であった。4)これらのことから、被覆率90%の部分マルチは高品質果生産に有効であり、果実への糖の集積と着花の安定には、緩やかな乾燥ストレスの付与が寄与していると推察された。

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