台湾における「伝統的宗教文化」の社会的位置づけ ―「エコ祭祀」政策をめぐる寺廟の抗議運動からの考察

書誌事項

タイトル別名
  • Social Position of Traditional Religious Culture in Taiwan : On the Protest by Temples against Government’s "Ecological Worship" Measure
  • タイワン ニ オケル 「 デントウテキ シュウキョウ ブンカ 」 ノ シャカイテキ イチズケ : 「 エコサイシ 」 セイサク オ メグル ジビョウ ノ コウギ ウンドウ カラ ノ コウサツ

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説明

台湾で2017 年夏,政府が環境保護政策の一環として進める「環保祭祀(エコ祭祀)」および法制化を目指す「宗教団体法」をめぐって,抗議運動が起こった。二つの抗議運動は,同時期に連動して起こったものではあるが,活動の主体は異なり,厳密には両者が共闘したとは言えない。しかし相乗作用によって広い関心を呼び,さらにインターネット上で政府に批判的な言説が拡散したことから,大きな騒動に発展した。 エコ祭祀は,線香や紙銭焼却の煙が大気汚染を引き起こすとして使用自粛を推奨するもので,これに反発する寺廟が抗議活動を計画したことから議論が巻き起こり,政府の意図が環境保護に名を借りた宗教弾圧にあるとの噂が拡散した。「宗教団体法」についても,仏教団体等が「憲法が保障する信教の自由を侵す」として反対運動を始め,その過程で政府が法案成立を強行しようとしているとの噂が広がった。 寺廟の参拝に見られる台湾の伝統的宗教文化は,国民党独裁期の「正統的中華文化」の文脈では等閑視され,それゆえ民主化以降に台湾アイデンティティと結びつき,「本土文化」を象徴するものとなった。今回の騒動拡大の経緯からは,本土文化をアイデンティティの核とする人々にとって伝統的宗教文化が重要な意味を持つと同時に,2016 年の政権交代に期待を寄せた彼らの失望が政策への信頼喪失につながったことが示唆された。

収録刊行物

  • 拓殖大学台湾研究

    拓殖大学台湾研究 2 23-50, 2018-03-25

    拓殖大学海外事情研究所附属台湾研究センター

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