書誌事項
- タイトル別名
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- On the Chukchi causative: correlation between the difference in degree of causation and morphosyntactic behavior
- チュクチゴ ニ オケル シエキ ニ ツイテ : キョウセイ ノ ドアイ ノ サイ ト ケイタイトウゴテキ フルマイ ノ ソウカンセイ
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抄録
本稿では、チュクチ語(チュクチ・カムチャツカ語族)において使役を形成するいくつかの形態統語的方法が、強制の度合いの差異化と関係していることを論じる。筆者は、チュクチ語の動詞の結合価の増減にかかわる操作を扱った呉人 (2009) において、チュクチ語の使役動詞には、①助動詞と共起し分析的に作られるもの、②自動詞から他動詞を派生するのに使われるのと同じ接辞から作られるもの、③もともとは「作る」という動詞的な概念を表わす語彙的接辞から作られるものなどがあることを記述している。また、これらは使役の強制の度合いにおいて差異がある可能性を指摘している。すなわち、使役派生に用いられる接辞の種類によって、意志を無視した「強制」の意味合いをもつ場合と、被使役者の意志を尊重する意味合いをもつ場合という違いが生じるとしている。本稿では、この指摘をさらに掘り下げ、その後の聞き取り調査で収集したデータで補強し分析する。具体的には、それらの方法が強制の度合いの違いに応じて使い分けられていること、そのような違いを表わすのに、結合価の増減の操作、いいかえれば、どの名詞項を前景化しどの名詞項を背景化するのかの操作が、重要な役割を果たしていることを論じる。チュクチ語の使役に関する先行研究(Inenlikej et al. 1969, Skorik 1977, Nedyalkov 1979, Dunn 1999)では、使役接辞についての記述はきわめて簡単で、使役の範囲も必ずしも明確に定められていない。本稿が考察対象とする、いくつかの使役接辞が持っている強制の度合いの差異化という機能についての指摘は、筆者の知る限りこれまで全くない。本稿では、自他対応と使役の相関関係と①~③の使役について呉人 (2009) に基づき概観した上で、①~③のうち、先行研究では触れられたことがない③の語彙的接辞に焦点をあて、この接辞による使役が逆受動化し、構文的には自動詞文でありながら、意味的・機能的には一種の使役表現となっているという珍しい現象について論じる。これは、逆受動化により被使役者を背景化するという情報構造上の操作が、使役の度合いの差異化に利用されているというチュクチ語の特徴を示すものだといえる。本稿の構成は以下のとおりである。まず、第2節では、チュクチ語の動詞の形態的自他対応のうち、使役とかかわる自動詞から他動詞への派生と、他動詞から自動詞への派生について概観する。第3節では、使役を派生する手段を概観したうえで、③の語彙的接辞から派生された使役動詞について詳述する。
収録刊行物
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- 北方言語研究
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北方言語研究 9 1-12, 2019-03-15
日本北方言語学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1050001339060639232
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- NII論文ID
- 120006620607
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- NII書誌ID
- AA12516968
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- HANDLE
- 2115/73729
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- NDL書誌ID
- 029686354
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- ISSN
- 21857121
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- 本文言語コード
- ja
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- 資料種別
- departmental bulletin paper
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- データソース種別
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- IRDB
- NDL
- CiNii Articles
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