グリムの『子供と家庭のメールヒェン集』の結末句について(奥田俊介先生、高木道信先生、高橋正先生退職記念号)

書誌事項

タイトル別名
  • Uber die Schlussformel in "die Kinder- und Hausmarchen" der Briider Grimm(In Commemoration of the Retirement of Professor Shunsuke Okuda, Michinobu Takagi and Tadashi Takahashi)
  • グリム ノ コドモ ト カテイ ノ メールヒェンシュウ ノ ケツマツク ニ ツイテ

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説明

P(論文)

メールヒェンの最後にはいわゆる「結末句」が置かれることが多い。この句の機能をグリムの『子どもと家庭のメールヒェン集』を例にして考察する。他の物語には見られない,この結末句の働きは,語りの終了を告げることで,物語の世界と現実とを明確に区分することにある。結末句の中には,物語られたことの信憑性を否定するようなものも存在するが,これも聞き手を,時間と場所を特定することのできない虚構の世界から現実の世界へと連れ戻すためのものである。またこれには「語り手」の存在も関わっている。元来,メールヒェンは語られるものであり,語り手を必要とする。その語り手に要求されるのは,非現実的な内容を素直に信じ,共感してみせることである。つまりメールヒェンを語る者は,そのような本来の自分ではない者を演じなければならない。物語の信憑性を疑う結末句は,その虚構の役割を演じていた者が,現実の人間へと戻るための仕組みでもある。

収録刊行物

  • 千葉商大紀要

    千葉商大紀要 42 (3), 127-147, 2004-12-31

    市川 : 千葉商科大学国府台学会

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