3 消化管間質腫瘍に対するイマチニブ(グリベック)治療(シンポジウム がんの分子標的治療, 第628回新潟医学会)

書誌事項

タイトル別名
  • Imatinib Treatment for Metastatic Gastrointestinal Stromal Tumors(Molecular Targeted Therapy for Cancer)

この論文をさがす

説明

イマチニブはチロシンキナーゼ阻害薬であり,KITキナーゼの恒常的活性化を原因とする消化管間質腫瘍(GIST)に高い効果を発揮する.2006年11月までに44名の転移・再発性GIST患者にイマチニブ治療を行った.奏効率は57%(著効3名,有効22名),CT値低下を伴う不変11名を加えた病勢コントロール率は82%であった.全44名の累積2年生存率は90%,3年生存率は79%であった.31名(70%)が現在もイマチニブ治療を継続しており,治療終了の13名のうちイマチニブ不耐例は2名のみであった.イマチニブに反応を示した36名のうち18名に再燃が認められ,無再燃期間の中央値は2年3か月であった.18名中9名が限局性の増悪形式を示した.これまでに二次耐性腫瘍患者11名に計22回の切除手術を行った.うち20腫瘍のKIT遺伝子cDNA分析が行われた.14腫瘍(70%)において原発巣と同じKIT遺伝子変異(一次変異)に加えて,tyrosine kinase domainの点変異による1残基置換が認められた(二次変異).二次変異型では,エクソン13の654番目のバリンのアラニンへの置換が最も高頻度であった.転移巣ごとに異なる二次変異型を示した症例が1例あった(C809G,N822K,D816E).これらの二次変異の遺伝子型はC809Gを除いて文献報告例と共通しており,KITキナーゼのイマチニブに対する不応答性は限られた残基の変化で生じるものと思われた.これらのデータは,病巣内に存在する微小な耐性クローンが二次耐性腫瘍を生じるという仮説を支持するものであり,イマチニブ奏効遺残腫瘍の切除に合理性を与える.3名の転移・再発性GIST患者において,イマチニブ治療に奏効し遺残した腫瘍の切除手術が行われた.3名とも完全切除が得られ,現在まで無再発生存中である(最長2年5か月).イマチニブは転移・再発性GISTに高い効果を発揮し,日本人GIST患者においても長期の内服が可能である.GISTに対するイマチニブ治療は,今後,急速に広がるであろう癌の分子標的治療のモデルケースとなるものと思われる.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ