儒家文化と中国教育の現代化について

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  • ジュカ ブンカ ト チュウゴク キョウイク ノ ゲンダイカ ニツイテ

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抄録

論文(Article)

本稿は国立鶴岡工業高等専門学校国語科瀬尾邦雄と中国河南省鄭州市の中原工学院講師辺冬梅との共同研究である。辺女史は本校と中原工学院との学術交流協定に則り日中比較文化研究のために来学したもので、昨年三月から九月までの半年間滞在した。この学術交流は一九九八年十一月に締結され現在までに鶴岡高専から十六名、中原工学院から十名の教員が派遣され日中の学術交流に貢献してきた。不肖も昨秋、交流の機会に恵まれ儒教受容史講座を担当したが、辺女史は不肖の交換要員として来学したものである。本論においては現代中国が旧弊の故に安易に排除した儒家的教育論を再検証し、現代中国人の根底に存在して中国人の思考と行動を決定づけている儒家思想の功罪を論じ、更にそれらの思想が現代中国の教育においても必要不可欠であることを論じたものである。儒家思想の根本は倫理道徳にあり、就中、その根源は「仁」に在り、それを礼で纏め、この両者の実践成果を「治国平天下」で表出するというものである。しかし、この儒家思想が中国的停滞を生んだのも歴史的事実であり、排除されるべき最大のものである。しかし、現代中国の教育改革を行う上で、人間的視点を失ってしまえば画竜点睛を失うことになる。然るに儒家思想における「仁」の思想は人間の原点であり、「仁」の思想こそ現代教育活性化のため内在させるべきものと論じた。また、中国人の根底に流れる儒家思想の天人合一思想も急激な科学技術・工業化が進む中国に於いては人間と自然とを連結させる意味で失うべきではない思想であるとした。更に『論語』に示された啓発教育、個性重視の因材施教も全体性と総合性とを育成する上で欠かせないものであると結論付けた。

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