中国契約法119 条「損失軽減規則」一本主義の破綻― 裁判例の分析を踏まえて―
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抄録
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契約の一方当事者の債務不履行によって損害が発生したら,相手方はその損害の賠償を請求することができる。しかし,時として,その損害の発生・拡大に相手方=債権者も寄与している場合がある。そうした場合には,当然,債権者の損害賠償請求額は減額されることになる。日本法はこれを過失相殺論で処理する。ところで,債権者の側にも過失があるという場合に,一方当事者の債務不履行によって損害が発生した後に,その損害の拡大の防止を債権者が怠ったというケースもありえる。日本法は,そうしたケースも過失相殺で処理する。ところが,中国法は,奇異なことに,一方当事者の債務不履行によって損害が発生した後の債権者に対する損失拡大軽減義務しか規定していない。契約法119 条がそれである。この119 条はウィーン売買条約(CISG)に由来する。中国の市場経済化は1990 年代前半から本格的に展開を遂げていくが,この市場経済化を媒介する最も重要な法律の1 つが契約法であり,統一契約法典の制定にあたって強烈に意識されたのは,国際的な契約立法を積極的に採り入れるということであり,そのモットーが,国内市場と国際市場をつなぐような契約法を作るということであった。本稿で論ずる契約法119 条の損失軽減規則もその1 つである。この119 条の規定が裁判の現場でどのような混乱を来しているのか。これが本稿の意図である。
収録刊行物
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- 江戸川大学紀要
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江戸川大学紀要 30 2020-03-15
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1050003824836872704
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- NII書誌ID
- AA12560733
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- 本文言語コード
- ja
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- 資料種別
- departmental bulletin paper
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- データソース種別
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- IRDB