「まだ見ぬヴェネチアの心惑わす幻影」 : マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』におけるフォルチュニィとバレエ・リュス

書誌事項

タイトル別名
  • « The Tempting Phantom of That Invisible Venice » : Fortuny and the Ballets Russes in In Search of Lost Time of Marcel Proust
  • マダ ミヌ ヴェネチア ノ ココロ マドワス ゲンエイ : マルセル プルースト ノ ウシナワレタ トキ オ モトメテ ニ オケル フォルチュニィ ト バレエ リュス

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抄録

バルベックの少女たちはフォルチュニィが発明したような照明を浴びて踊るダンサーへの暗示で描かれる。エルスチールは話者に少女たちを紹介し、フォルチュニィが16世紀のヴェネチアの東洋的なテキスタイルを再現したことを教える。ここにはレニエからの影響が見られる。フォルチュニィのドレスは、アルベルチーヌに関わる描写ではエロティスムと別離の象徴だ。アルベルチーヌのエロティスムと切り離せない曖昧なセクシュアリティは、「サン=セバスチャンの殉教」によって暗示される。同名のダヌンツィオの音楽劇は両性具有を思わせる女優イダ・ルビンシュタインが主役を務めたが、この上演にはフォルチュニィが発明した舞台照明の明らかな影響がある。またプルーストは、バレエ・リュスの演目でルネッサンス期のヴェネチアを舞台にする『ヨゼフ伝 説』とフォルチュニィのドレスを直接関連づける。過去のヴェネチアがバレエ・リュスとフォルチュニィのドレスという芸術の中で甦ったように、アルベルチーヌもまた、話者によって創造される芸術の中で甦るだろう。これが小説中のフォルチュニィのドレスのモチーフである「死と復活を象徴する番いの鳥」が意味することである。

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