血液透析導入期のtransferrin saturationと虚血性心疾患発症との関連

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  • ケツエキ トウセキ ドウニュウキ ノ transferrin saturation ト キョケツセイシン シッカン ハッショウ ト ノ カンレン

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透析患者の鉄補充療法の判断基準の一つである血清transferrin saturation(TSAT)は,鉄代謝のみならず心血管疾患死亡率との関連も報告されている.しかし,わが国の血液透析(hemodialysis:HD)導入期のTSATとその後の虚血性心疾患(ischemic heart disease:IHD)発症との関連については,これまで十分に検討されていない.今回,2012年から2016年に当院で新規にHDを導入した269例のうち,除外基準に基づいて167例を除外し,最終的に102例(男性70例,平均年齢66.5歳,観察期間 中央値802.5日)を対象とした後ろ向きコホート研究を行った.HD導入期のTSATを鉄欠乏の指標である20.0%を境に,TSAT 20.0%以上を高値群(n=68),TSAT 20.0%未満を低値群(n=34)に分類し,HD導入後の外来維持HD経過中における新規IHD発症の有無について診療録をもとに検討した.HD導入期のTSATと同時期の各因子との相関を評価したところ,TSATは血清クレアチニン値,フェリチン値と有意な正の相関,白血球数,血小板数,血清総蛋白,CRP値と有意な負の相関を認めた.TSATとの関連が報告されている各種因子についての重回帰分析では,血小板数(β coefficient=−0.173,p=0.016)で有意な負の相関,フェリチン値(β coefficient=0.408,p<0.001),で有意な正の相関を認めた.TSAT低値群ではフェリチン値は有意に低値であったが,ベースライン時における患者背景においては両群間で有意差を認めなかった.観察期間中に新規IHDは16例発症し,TSAT低値群では34例中9例(26.5%),TSAT高値群では68例中7例(10.3%)とTSAT低値群で有意に多く発症していた(p<0.05).Kaplan-Meier法による解析においても観察期間中にIHDはTSAT低値群で有意に多く発症していることが示された(Log Rank,p<0.05).多変量解析によるCox比例ハザードモデルでは,ハザード比はTSAT低値群で3.131(P<0.05)であった.HD導入期のTSAT低値は,IHD新規発症の独立したリスク因子であることが示唆された.

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