ビョウタケ目ビョウタケ科の日本新産種ダイセンニカワブドウタケ(新称)について

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タイトル別名
  • Ascotremella faginea (Helotiales, Helotiaceae) new to Japan

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抄録

鳥取県大山のブナ林内において採集された標本(落葉広葉樹の落枝上に発生)に基づき,Ascotremella faginea(Peck)Seaverの日本における発生を初めて報告した。本種は,ビョウタケ目ビョウタケ科に所属するAscotremella属の基準種であり,かつ唯一の種類である。外観的には落葉広葉樹の落枝や倒木上に,ゼラチン質な紫褐色~鈍赤紫色の,複雑に入り組んだ脳みそ様塊状の子実体(子嚢果)を形成すること,また,顕微鏡的には比較的小形な(大山産標本ではほぼ7-9×3.5-4μm),楕円形,単細胞,無色の子嚢胞子を持つが,その表面に縦に走る繊細な筋状の模様(光学顕微鏡下では見逃され易いが,走査電子顕微鏡下では低い背びれ状~筋状の隆起として観察される)が有ることを著しい特徴とする。文献によれば主たる分布地は北アメリカ東部(原記載地はアメリカ合衆国ニューヨーク州)のおよび北西ヨーロッパのようであるが,南アメリカ(ブラジルおよびアルゼンチン)およびオーストラリアからも報告が有る。また,アジアからはトルコおよび千島列島での発生が知られている。本種は,外観的特徴においてブナ倒木上に一般的なニカワチャワンタケ(Neobulgaria pura=Ascotremella turbinata)に類似するが,同種は子嚢胞子が平滑で,また,托外層の構造において異なる。新和名として,産地および外観的特徴に因み,ダイセンニカワブドウタケ(大山膠葡萄茸)を提案する。

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