変貌する米国取締役会 : モニタリングモデルの確立と直面する課題
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- 田村, 俊夫
- 一橋大学
書誌事項
- タイトル別名
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- Evolving U.S. Corporate Boards
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抄録
・ 1970年代頃までの米国上場会社では、所有と経営の分離により実質的権力を掌握したCEOが制約のない経営権を行使し、取締役会の存在は有名無実であった。そのような時代にアイゼンバーグ教授が提唱した取締役会の監督機能を重視する「モニタリング・モデル」は、その後、米国実務で完全に確立するに至り、さらに国境を越えてグローバル・スタンダードとして各国で受容されている。・ モニタリング・モデルが機能するために最も重要なのは、取締役会の判断がCEOから独立したものであることである。そのために、独立取締役が過半数を占める取締役会、独立取締役のみで構成される指名・報酬・監査委員会、筆頭取締役(ないし独立取締役会長)の設置、エグゼクティブ・セッションといった舞台装置が発展し、さらには証券取引所規則等によりそのほとんどが義務付けられた。・ それにも関わらず、多くの米国企業の取締役会は十分な役割を果たしていないと批判される。エンロン、ワールドコム事件に象徴されるように、形式的に取締役会のベストプラクティスを整えるだけでは、経営陣の監督を真に行うことはできない。実証研究でも。独立取締役の比率を高めるだけでは、企業価値が高まらないことが示されている。・ モニタリング・モデル確立後の米国における議論と実務の主たる関心は、どうすれば取締役会が実効的に機能するようになるかという問題に移っている。取締役会の実効性を担保するために特に重要と考えられているのが、取締役の実質的独立性の確保、取締役会の人材ポートフォリオの見直し、率直な議論を促進する取締役会のダイナミズム、経営陣から独立した情報へのアクセスといった問題である。・ しかしどれだけ実効性のある取締役会の構成・運営を心掛けても、経営陣の経営判断に対する取締役会の行動は謙抑的かつ遅れがちになる。それに対してアクティビスト・ヘッジファンドや機関投資家が不満を抱き、経営陣ではなく独立取締役との直接対話を求める圧力が増大している。実効性のある取締役会と株主エンゲージメントは車の両輪であり、取締役会はその要に位置する。米国におけるガバナンスの最大の焦点が株主と取締役会の関係に移行しているのは、この文脈から理解することができるだろう。
収録刊行物
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- 資本市場リサーチ
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資本市場リサーチ 33 50-98, 2014-10
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1050006065609420160
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- NII論文ID
- 120006809315
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- NII書誌ID
- AA1285312X
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- HANDLE
- 10086/31019
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- 本文言語コード
- ja
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- 資料種別
- journal article
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- データソース種別
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- IRDB
- CiNii Articles