産業と金融の革新について―ヒックス資本理論からの展望―

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タイトル別名
  • On Industrial and Financial Innovation : Perspective from Hicks’s capital theory
  • サンギョウ ト キンユウ ノ カクシン ニ ツイテ : ヒックス シホン リロン カラ ノ テンボウ

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抄録

経済の革新(innovation)なしには,持続的な経済成長を実現することはできない.また,革新を進めるためには,有効な資本理論がその基礎になければならない.日本経済を「失われた20 年」からようやく脱出させてきたアベノミックスも,当初の経済政策の第3 の矢であった成長戦略の背後に,有効な革新と資本の理論がなかったために,新型コロナ・ウィルスの流行(covid 19 pandemic)に出会い,ついに失速せざるを得なくなった.この論文は,ヒックス資本理論の学説的な研究の成果を現代の経済革新の問題に応用することを目指している.ヒックスの資本理論に関する新しい解釈は,現代の問題に対しても何らかの示唆を与えることができるように考えるからである.まず,ヒックス『賃金の理論』(1932)の中に示された経済進歩と分配に関する比較静学的な研究が,どのような形で『資本と時間』(1973)の技術革新とその経済効果に関する動学的な理論へと発展していったかについて検討する.そのような研究成果の一部は,「金融フロンティア理論(FFM)」の中にすでに示されている.その理論は,産業と金融における革新の相乗効果がなければ,長期にわたる経済発展はありえないことを明らかにしている.この論文では,そのようなヒックスの資本と革新の理論に基づいて,その成果を革新の一般経済史へと応用し,さらに今後の日本経済に関する展望へと応用することを試みる.『経済学の考え方(Economic Perspective)』の中の「新産業主義」の展望を手掛かりに,現代の革新の可能性について考える.

収録刊行物

  • 経済学季報

    経済学季報 70 (3), 69-105, 2020-12-18

    立正大学経済学会

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