弓部大動脈瘤に対するK-circuit を用いたtotal debranching TEVAR法 : 脳保護法

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  • Total Debranching TEVAR Method Using K-circuit for Aortic Arch Aneurysm : a Method of Cerebral Protection

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胸部大動脈ステントグラフト内挿術(TEVAR)は,低侵襲性が広く認知され,胸部大動脈瘤に対する治療手段としてparadigm shiftを起こした.しかし大動脈瘤が弓部大動脈に近接する場合には,中枢側landing zoneと脳血流の両者を確保するためにhybrid arch repair手技が必要となる.上行大動脈にinflowをおき弓部3分枝にバイパスを置くtotal debranching TEVAR法がその一つである.人工心肺や低体温循環停止などの手技は不要で低侵襲であるが,脳合併症の頻度は意外に高く,常温下で行う弓部分枝の操作時には,より積極的な脳保護対策が重要であると思われた.当科では,バイパス用の人工血管側枝を利用して腋窩動脈へのシャント回路を作成し,可能な限り脳血流を維持した状態での操作を行うK-circuit法を考案したので報告する. 手術手技は,inflowとして上行大動脈に側側吻合したバイパス用の3分枝人工血管の尾側の側枝と,腋窩動脈との間にシャント回路を作成した.右腋窩動脈へのシャント中には,右総頚動脈や右椎骨動脈の血流が常に温存される.また左腋窩動脈のシャント中には,左椎骨動脈系の血流が維持されている.このシャント回路を交互に利用して脳血流を維持しつつ,弓部3分枝のバイパスを完成させた. 結果は,2012年から2018年までの間に,K-circuit法を用いてtotal debranching TEVARを施行したハイリスク症例は6例であった.手術死亡はなく,脳合併症の発生もなかったが,1例に不全対麻痺の発生を認めた. total debranching TEVAR施行時のK-circuit法を用いた脳保護法は,複雑な手術器具を必要とせず,回路として単純であり,有効な脳保護効果を持ち,脳合併症発生を軽減する可能性が示唆された.

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