梶井基次郎におけるカーニバル文学の芽生え : 絶筆作品「のんきな患者」論

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  • Literary Structures of Motojiro Kajii's Last Article “Nonki-na-kanja” in Comparison with His First Novel, “Remon”

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抄録

梶井基次郎はデビュー作の「檸檬」をはじめとする二十篇ほどの作品を残し、昭和七年に三十一歳の若さで肺結核により故郷の大阪で没した.『中央公論』一九三二年一月号に掲載された「のんきな患者」が絶筆作品となった.従来、彼の作風は感覚的・詩人的な側面の強い独自の世界を創り出しているものの、白樺派の影響を強く受けた身辺心境私小説に近いものであった.しかし、絶筆となった「のんきな患者」では事情がやや異なっているようである.この作品の場合、自らの病状や身辺の出来事から、巷で多くの人々とその家族が自分と同じ肺結核で苦しんでいることに関心を移し、自らの文学観にも拡がりをみせるに至るのであった.そしてこれまであまり関心のなかった西鶴の作品を丁寧に読み込み、さらに以前から親しんでいたドストエフスキーなどの小説の手法をとりいれ、いわゆるモノトーンな私小説からカーニバル文学への移行が示された作品であると言えよう.

身辺心境私小説

ドストエフスキー

西鶴

対話的内的独白

カーニバル文学

identifier:DB004700009249

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