ロレンスにおける冬枯れと地下の世界

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タイトル別名
  • ロレンス ニ オケル フユガレ ト チカ ノ セカイ

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抄録

ロレンスが若い頃父親を通して知った地下の世界は、後に蛇踊りや蛇の詩の中に再び現れる。また「西洋カリンとナナカマド」 の詩の中でも、冬枯れとそれを慰めるための酒の熟成が、酒神ディオニソスにまつわる地獄の経験と結びついている。また彼はイタリアの溶岩がかたまった「平穏」の内側のエネルギーを、地球の鼓動や脈動としてうたう。彼の地下の体験はあたかも伏流のように意識の奥深く沈潜し、それにまつわる「蛇」や神話の世界となって作品の中で泉のごとく吹き出す。それはギリシャ以来の神々の醸し出す豊かな酒の熟成する世界であると同時に、今なお有限の存在たる人間の畏敬の対象となっている。ロレンスの生涯のはじまりがこの豊かな地下の世界であったことの意味は大きい。ロレンスは地下の世界に対して、本質的な暗いマイナスイメージと同時に、生きものを育んできた豊かなエネルギーの根元として、それを感じとっていたのである。

ロレンスの地下体験

酒の熟成と冬枯れ

地球の豊かな活力

酒神と地獄の体験

identifier:BO009100003864

収録刊行物

  • 文学部論集

    文学部論集 91 129-138, 2007-03-01

    佛教大学文学部

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