狂言作者並木正三伝の周辺

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タイトル別名
  • キョウゲン サクシャ ナミキ ショウゾウデン ノ シュウヘン

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抄録

十八世紀半ばの大坂道頓堀に生まれ育ち、四四年の生涯に一〇〇作以上の作品を書いた狂言作者の逸材、並木正三の伝記は、上演歴をまとめて、その十三回忌の天明五年に刊行された『並木正三一代噺』に詳しい。いっぽう、同じく十三回忌追善に同業の作者たちが催した「正三述作の狂言」の本読み会の番組には『穴意探』の作者近松東南、当時の俄の名手、富山捲足らの名前が見える。いわゆる<大阪騒壇>の一類とおぼしき人々で、正三とは俄の同好の友であったらしい。『一代噺』に「入我園主人」が序文を寄せたのもまた、俄の縁で、正三の『大坂神事揃』は、まさに俄を趣向にした傑作であった。捲足について多くは未詳だが、明和七年刊『雷子改足改名祝賀句集』(仮題)には捲足を称える正三の句が知友五六人中、別格で入集する。ここに窺えるのは、道頓堀の賑わいの中で粋人たちと遊ぶ正三の姿である。正三伝の知られざる一面であろう。

identifier:KG002600009133

収録刊行物

  • 京都語文

    京都語文 26 72-86, 2018-11-24

    佛教大学国語国文学会

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