家族性ALSの原因遺伝子FUS/TLSに対する新規治療薬の可能性

書誌事項

タイトル別名
  • 第五回千葉医学会奨励賞 家族性ALSの原因遺伝子FUS/TLSに対する新規治療薬の可能性
  • ダイゴカイ チバ イガッカイ ショウレイショウ カゾクセイ ALS ノ ゲンイン イデンシ FUS/TLS ニ タイスル シンキ チリョウヤク ノ カノウセイ
  • カゾクセイ ALS ノ ゲンイン イデンシ FUS/TLS ニ タイスル シンキ チリョウヤク ノ カノウセイ
  • Methylation inhibitor could be a novel therapy for FUS/TLS-linked familial ALS

この論文をさがす

抄録

type:text

筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral sclerosis; ALS)は上位・下位の運動ニューロンが変性する神経変性疾患であり,発症後3-5年には呼吸筋の麻痺によって死に至る重篤な疾患である。いまだ原因など病態の解明や有効な治療法の開発には至っていない。大部分が孤発例であるが,約10%は家族性であり,我々の研究グループは家族性ALSの原因遺伝子のひとつであるFused in sarcoma/Translocated in liposarcoma(FUS/TLS)に着目して機能解析を行った。FUS/TLSはRNA/DNA結合蛋白質であり,RNA代謝機能を有していることから,FUS/TLSの変異によって生じるRNA代謝の異常がALS発症に関与している可能性が考えられている。 FUS/TLSを原因遺伝子に持つ家族性ALS患者では,核移行シグナル(Nuclear localization signal; NLS)が存在するC端の遺伝子変異が数多く報告されており,FUS/TLS変異体が細胞質に凝集体を形成していることが知られている。この凝集体が毒性であるのか単なる副産物であるかは不明であるが,細胞質への偏移とその結果としての凝集体形成を抑制することがALS の新規治療法となる仮説が立てられる。まず,我々の研究グループはYeast two hybrid法を用いてFUS/TLSの結合因子であるアルギニンメチル化酵素PRMT1 (Protein arginine N-methyltransferase 1)を同定し,PRMT1によるFUS/TLSのアルギニンメチル化がFUS/TLSの核-細胞質間輸送に関与するという結果を得た。さらに,メチル化阻害剤投与によってFUS/TLS 変異体における細胞質の凝集体形成が抑制できた。これらの知見によりメチル化阻害剤は,FUS/TLSのC端に遺伝子異常を持つ家族性ALS患者に対して新規治療薬となる可能性が示唆される。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ