1930年代における経済的相互依存をめぐるアメリカの認識 : 「グローバリゼーション」と東アジア国際関係

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  • 一九三〇年代における経済的相互依存をめぐるアメリカの認識--「グローバリゼーション」と東アジア国際関係
  • 1930ネンダイ ニ オケル ケイザイテキ ソウゴ イソン オ メグル アメリカ ノ ニンシキ グローバリゼーション ト ヒガシアジア コクサイ カンケイ
  • 'Globalization' and International Relations of East Asia in the 1930s: American Perceptions on Economic Interdependence

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抄録

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「歴史としてのグローバリゼーション」において第一次世界大戦は人々の認識に重要な変化をもたらした。戦争の長期化は人々にグローバリゼーションに伴って深まりつつあった経済的相互依存を意識させただけでなく、それが脆弱性に転化する可能性にも目を向けさせたのである。日本陸軍においても経済的相互依存の二重のディレンマ(通商途絶と貿易均衡)が認識され、石原莞爾はアメリカとの経済的相互依存を断ち切る覚悟で満洲事変に二重のディレンマの解決を託した。グローバリゼーションに日本が押しつぶされていくのではないかというような危機感が「ワシントン体制」への挑戦を生み、その追認を後押ししたのである。しかし、外務省や商工省は日本の脆弱性を減じるための経済構造改革に関する部分で自由貿易原則を拒否しつつそれ以外の領域では自由貿易原則が維持されることに期待して対米関係改善をめざした。一方、アメリカは当初、日本がグローバリゼーションに対して抱く不安を理解することはなかった。むしろ、アメリカから見れば日本の「異質」性こそがグローバリゼーションにおける脅威であった。ウィルソン大統領は、日本は第一次世界大戦の惨禍を共有していないので、平和の重要性を理解していないと断じ、通商問題担当者は東洋的な社会を維持したまま西洋経済システムに参入してきた日本が「公正」な競争になじむかどうか疑問を抱いた。アメリカの当局者は「公正」な競争かどうかの判断において歴史的な視角を欠きがちであった。

source:Studies on humanities and social sciences of Chiba University

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