古代地中海世界における国家と教会の互恵関係 -ギリシア・ローマ世界とキリスト教会-

書誌事項

タイトル別名
  • コダイ チチュウカイ セカイ ニ オケル コッカ ト キョウカイ ノ ゴケイ カンケイ ギリシア ローマ セカイ ト キリスト キョウカイ
  • Mutually Beneficial Relationship between State and Church in the Ancient Mediterranean World

抄録

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千葉大学大学院人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書 第269集 『古代地中海世界における文化受容の諸断面』保坂 高殿 編

"The reception of cultures in the ancient Mediterranean world", Chiba University Graduate School of Humanities and Social Sciences Research Project Reports No.269

古代地中海世界にはギリシアやローマの文化という,ヨーロッパ近代社会の視点から見れば,その世俗的領域の生成・発展の範型となった文化がある一方,他方にはユダヤ・キリスト教文化という,宗教的領域において多大な寄与をした文化も存在する.主権,領土および国民の三要素を特徴とする近代国家が,それに加えて,国家統治に対する市民的意思の直接関与,そして(シンガポール等,現代の都市国家を例外として)一都市の枠組みを超えた国民・国民意識の形成,およびその求心点を構成する中央政府の成立をもその典型的徴表として主張できるとするならば,古代ギリシアの諸ポリスは奴隷制の存在と諸都市横断的な中央政府の不在という点を除けばほぼ近代国家に該当すると言って良く,既に 古代において近代国家の一歩手前にまで発展していたのである.しかし,これら東方の古代都市は,ポリス(アテナイ)から領域国家(マケドニア)への,そして東方ギリシアか ら西方ローマへの覇権移行に伴い,諸都市を包括するマケドニアおよび大都市ローマの指導の下,西方と同様に民会機能が徐々に麻痺し,資産評価額に基礎づけられた半貴族制的 な行政組織へと改編されて市民的自律性を失い,中世期に至っては西方東方共に,市民の権利に基づく政治的関与の度合いは諸侯や伯等,王権と都市との中間に位置する(封建)勢力の介在によってさらに低下するのみならず,弱小な中央権力の下で働く遠心力により都市間の横断的関係も非活性化することになった.では,宗教的領域におけるキリスト教の寄与はどの点に存するのであろうか.その前に,このような問題設定すること自体,多少…

source:古代地中海世界における文化受容の諸断面(2011~13年度)

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