【史料紹介・解説】「愛国心」の脱構築をめざした人々 -「社会主義連盟」、ブラント、ロートシュタインに見る「商業的愛国心」批判-

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タイトル別名
  • シリョウ ショウカイ カイセツ シャカイ シュギ レンメイ ブラント ロートシュタイン ニ ミル ショウギョウテキ アイコクシン ヒハン

抄録

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千葉大学大学院人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書 第283集 『帝国・戦争・「愛国心」に関する比較研究』栗田 禎子 編

"Comparative Studies on Empire, War and "Patriotism"", Chiba University Graduate School of Humanities and Social Sciences Research Project Reports No.283

「愛国心」の問題を考える際には、歴史学的視点が重要である。これまでの歴史の中で「愛国心」が問題とされる時、それはどのような具体的状況、政治的文脈においてであったのか、を明らかにすることが不可欠だと考えられるのである。近・現代史を振り返ると、欧米・日本等の先進資本主義諸国における「愛国心」の喧伝が、客観的に見て、市場や原料を求めての植民地獲得のための征服戦争(あるいはこうして植民地を獲得した帝国主義諸国同士の戦争)に国民を動員するための手段であったことは否定できない。「愛国心」は戦争と不可分の存在であった。だが、現在の世界にも今なお戦争を行なおうとする勢力が存在し続けている以上、こうした歴史的事実でさえも、たえず振り返り、確認しつづけなければ我々の意識から消し去られてしまう危険性がある。以下では、このような問題意識に基き、19世紀後半から20世紀初頭にかけての、まさに帝国主義の全面展開が始まり、それに伴って戦争への国民動員のための「愛国心」鼓舞が盛んとなった時期に、こうした動きに疑問を覚えた人々がどのような分析・考察を行ったのかを示すいくつかの史料を、特にイギリス(イギリス帝国)の場合について紹介・解説したい。具体的には、(A)1880年代のイギリスでマルクス主義の立場から活動した「社会主義連盟」 の文書、(B)独自の立場から植民地主義批判を展開したW.S.ブラントによる1911年の著書、(C)ロンドンに亡命していたロシアの社会主義者テオドール・ロートシュタインによる第一次世界大戦中の論文、の3点を取り上げ、それぞれが「愛国心」の問題をどのように捉えていたかを紹介する。

source:帝国・戦争・「愛国心」に関する比較研究(2013年度)

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