「人生会議」ポスターは本当に失敗だったのかーパブリックヘルスコミュニケーションにおけるユーモア表現の受容性ー

書誌事項

タイトル別名
  • Acceptability of humorous expressions in public health communication

抄録

2019 年に厚生労働省が公表した「人生会議」ポスターはお笑い芸人によるユーモア表現で関心喚起を狙った新しい試みであった。本研究では,パブリックヘルスコミュニケーションの視座から本ポスターの成否とユーモア表現の受容性を検討した。ニュース記事に対するコメントの内容分析から,批判の理由は主に感覚的・生理的な嫌悪感・不快感にあることが示された。アンケート調査から,本ポスターは攻撃的ユーモア表現に相当すること,愉快と感じた者が不快と感じた者を大きく上回ったが,ユーモア非志向者では不快感が高まること,不快は関心喚起力,説得力にも関係しうることが示された。本ポスターを制作した目的は一般市民に対する啓蒙であり,結果的に衆目を集めた事実を考えると,完全なる失敗とは言いがたい。少なくとも即座に配布を中止する必要はなかったと考えられる。ユーモア表現をパブリックヘルスコミュニケーションに活かすには,受け手の多様性を前提としたプレテストのルール化と,抗議や批判に対する対処方針の策定が望まれる。

収録刊行物

  • 社会情報研究

    社会情報研究 3 (1), 13-21, 2021-10-15

    学校法人先端教育機構

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