日本の営業用バス運転士とSEの賃金収入プロファイル : 2011年と2016年のデータの述べるところ

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タイトル別名
  • On the earnings profiles of bus drivers and SEs in Japan : Evidences from 2011 and 2016 datum
  • ニホン ノ エイギョウヨウ バス ウンテンシ ト SE ノ チンギン シュウニュウ プロファイル : 2011ネン ト 2016ネン ノ データ ノ ノベル トコロ

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説明

日本企業の賃金収入プロファイル(earnings profile)が(終身雇用を前提として)右上がりになっている要因として企業特殊的人的資本の投資をしているためとする仮説(見解)とインセンティブ要因とする仮説がある。江口(2019)はインセンティブ要因、すなわち長期にわたり労働者が「手抜きをせずに誠実に働く」という姿勢を引き出すために賃金収入プロファイルが右上がりになっている、その程度や度合いを見極めるために「インセンティブ要因が中心で賃金が右上がりになっていると思われる職種」として日本の「バス運転士」に注目しその賃金プロファイルの傾きを調べた。本稿はさらに一歩進んで、バス運転士の賃金プロファイルと比べて日本企業で働く一般的な労働者の賃金スロープがどの程度急であるかを調べる。具体的にはバス運転士とSE(システムエンジニア)の賃金収入プロファイルのスロープを「賃金構造基本統計調査」の2011年(平成23年)と2016年(平成28年)のデータを使って計測し比較する。もしそこに大きな差がないとすればSEの賃金に見られる日本企業の賃金体系が年功的である理由は「企業特殊的人的資本投資が行われるから」ではなく「インセンティブ要因が主たる要因」と解釈されることになる。推定結果として2011年、2016年のいずれについてもSEの賃金収入プロファイルとバス運転士のそれとの間に統計的に有意な差は認められないものの、バス運転士は「年齢よりも勤続年数」が、SEは「勤続年数よりも年齢」が賃金を上昇させる要因として働いている傾向が観察されることが示される。このような結果は日本企業の賃金が年功的であることの主たる要因は企業特殊的人的資本の蓄積によるものであるとする従来の定説に対して疑念を投げかけるものと解釈されることが論じられる。

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